展覧会
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執筆: 記事中参照
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公開日: 2009年 9月 17日 |
今春開催された天草在郷アンデパンダン展での写真作品でも知られる、昨年多摩美術大学大学院を修了したばかりの堀彩野の初個展。
キャピズム キャピズムとは私の造語で、キャピキャピのキャピタリズムの事であり、ハイパー&ロウアー・キャピタリズムのこと。 キャピキャピと波乗りジョニーのように、流行をおいかけること。
ルイヴィトンに憧れることは、もちろん保守的。だけれども、ブランドまがいを作り出すこと、画像検索をしてインスタントにプリントアウトすること、そういうキャピキャピした行為は、社会を率先しておおらかに動かしている。 109ブランド、もしくは百円均一のように。マイケルジャクソンのように。 自分を殺めるほどの痛みと引き換えに、ポップの王様。
偽物だとしても、ただの紙切れ1枚の画像でも、手に入れた物は武器になる。 武器にして生きていくしかない。 ジャンクなキャピズムに、火をつける。 私のポケットは膨らんでいる。札束か、こぶしか、もしくは。
口紅で絵画 とりあえず私は、絵筆を持っている。口紅を片手に。 口紅を塗る事は、生活の中の、社会の中の、世界の中の、パズルの1ピース。 パズルの1ピースには必ず取っ手がある。次につながる取っ手が。細い糸のような取っ手が。それを辿っていくとまた新しい取っ手をみつける。パズルの1ピースを見つめる事は、世界に対し、ただの切り取った部分でしかない。そして、パズルの1ピース、1ピース、を繋げたら、想定外の、今正しいと思われる形ではない別のパズルを見つけることも可能。 たとえ、それがどんなにいびつな形でも、それが、アクチュアリティーだ。
とはいえ、私もファナティック個性神話の視野狭窄で想定される、パズルの1ピースでしかない。 口紅も、ハイヒールも、女が女装するための武器。プラスチックの銃でさえ武器であるように。 一人の女ができる事は1ピースの取っ手の先をさぐる事であり、完成されるはずのパズルではなくて、偽物、幻想、明日の風景、または別の角度からみたらゴッシプのようなものを盗み聞くことかもしれない。
今、パソコン上で開きっぱなしのいくつものフォルダーとファイル。 「本物」「普通」「正しい」「美しい」、溢れ出る情報を疑いながら。 だから、私はいつもポケットの中のトリガーに指をかけている。水鉄砲の、かもしれないけれど。 私の整頓されていないiBookのデスクトップのように、どこへも向けられない銃口が、いびつなアクチュアリティーであることを信じながら。 そのままスクリーンショットで写し、プリントアウトするように、私はアクチュアリティーを、ポケットのトリガーを描く。 - 堀 彩野
作家略歴 1982年 東京生まれ 2006年 多摩美術大学絵画学科油画選考卒業 2008年 多摩美術大学大学院美術研究科修了 2009年 天草在郷美術館アンデパンダン展出品
全文提供: 堀 彩野
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最終更新 2009年 9月 10日 |