ポッシブロ:走って流して山ができた |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 11月 01日 |
この展示は、営業時間中の銭湯で作品やパフォーマンスを発表するという企画です。作品は脱衣所や浴室にインストールされ、入浴しながら鑑賞することもできるようになっております。 作家達は会場となる〈梅乃湯〉に、約四ヶ月に渡って風呂掃除やリサーチを重ね、銭湯やそこから派生する日常の行為や日本の文化を解体しながら作品制作に向き合いました。そして彼らは、銭湯の機能を奪わずして表現を可能にするために、必然的な着地点を目指して日常とアートの関係を自問自答し続けます。 3.11の震災以降に訪れた偶然の〈梅乃湯〉との出会いは、立ち止まった我々の手足を動かし始める切っ掛けとなり、展示を開催するに至りました。今ここで、展示を通して汗水流して積み上げてきた歴史や文化を見つめ直し、そして日本人としていられる場所で形にして確認したいと、それがこれからの自身のためになると信じてただ体感している事実の共有を求めます。 参加アーティスト 〈会期中のイベント〉 ・11月6日 16:30-17:00 ・11月10日 24:00-26:00 ※それぞれの参加費は無料ですが、〈クロージングお掃除〉以外は入浴料がかかります。要申し込み。 「走って流して山ができた」HP ※全文提供: ポッシブロ 会期: 2011年11月1日(火)~2011年11月10日(木)(会期中無休) |
最終更新 2011年 11月 01日 |
東京芸術大学の学生らによる展覧会が銭湯で開かれている。脱衣所はもちろん、浴室にも作品が設置され、入浴しながら鑑賞できる点が面白い。
浴室天井に吊るされた巨大な布は、二藤建人による作品。午後の早い時間には天井の窓から差す光に照らされ、鮮烈である。長方形のシンプルな形状だが、両端を固定された布が中央にかけてたゆむ曲線の美しさに目を奪われる。抽象的に楽しむだけでなく、子供と一緒に鑑賞するならば船の帆や波など様々なものに形を重ねて想像するのも楽しいだろう。素材が雑巾という点にも驚かされる。銭湯で使われてきた多くの雑巾たちに思いを馳せるのも興味深い。
男湯と女湯の境の岩壁に掛けるように展示された、桑田朋以による陶製の白い鳥は、観ることの叶わない壁の向こうが意識されて興味深い。また、女湯脱衣所に設置された中野岳の、女性の下着を使ったインスタレーションは、男湯からもちらりと見える展示になっている。これも、銭湯で男湯と女湯が分かれている建築を生かした展示と言えるだろう。少々下着のバリエーションが乏しく、もっと様々な年齢や人格を想像させる下着が使用されていたり、男性バージョンがあったりすると、作品の見え方も違っていたかも知れない。そんなことを、鑑賞後に男女で語り合うのもまた、面白いだろう。若手作家による、銭湯という場を生かした展覧会、ぜひ老若男女で楽しみたい。