樋口佳絵:エンシンリョク |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 1月 30日 |
《ためいきもうふ》2008年、tempera, oil on canvas、112 x 97cm copy right(c) Kae HIGUCHI / Courtesy of NISHIMURA GALLERY 樋口佳絵は、1975年仙台市に生まれ1997年に東北生活文化大学を卒業しました。卒業後、樋口はテンペラと油彩を用いた技法を独学で習得し、現在も仙台を中心に活動を続けています。 2005年春に東北、北海道在住の作家を紹介するシリーズ企画展「N.E.Blood 21」(リアス・アーク美術館)で取り上げられ、同年西村画廊で開催した初個展「24℃」では、一見可愛らしく、それでいてどこか違和感を醸し出す邪気を秘めた作品が話題となり、全国的にも注目されることとなります。その後、2005年度宮城県芸術選奨を受賞、2006年1月には北海道立近代美術館の「A MUSE LAND 2006 スウィート・メモリーズ」に出品し、また2007年にはVOCA展(上野の森美術館、3月)に選出され大原美術館賞を受賞するなど、精力的に制作を続ける期待の若手作家です。 当画廊での2年ぶりとなるこの度の個展では、樋口の作品を特徴づけるテンペラ、油彩の混合技法による新作11点を発表します。今日起きた出来事をどうにか整理して明日を向かえるというイメージを、きらきらと輝く水滴が舞う浴室の中で佇む少女に投影した「翌日」や、怒りに似た感情を抱きつつもその感情の起伏を鎮めようとする様子を具現化した「カンジョウセン」。柔らかそうな三つ編みをなびかせてどこかへと歩き出す、あるいは出て行こうと前進する少女の姿を描いた「エンシンリョク」など、子供という存在自体の愛らしさを感じさせる一方で、その外見の対局ともとれる秘められた不調和な内面を彷彿とさせる作品を展示します。 そして、3度目となる今回の個展では、作家の得意とするモチーフである人物、特に少年、少女に加えて老人や、苺といった静物にも着目したことで、これまでに確立した独自の表現の幅が広がり新たな可能性と展開を予感させます。乳白色の下地が演出するフラットで滑らかな心地のよい質感は、樋口特有の表現形態の基盤であり、そこに描かれる世界観は誰もが体感したことのある心象風景として想起され、見る者の記憶を呼び覚まし共感させます。どこか懐かしくより一層深みを増した新作にどうぞご期待下さい。 ※全文提供: 西村画廊 会期: 2009年2月3日-2009年2月28日 |
最終更新 2009年 2月 03日 |