プリズム・ラグ ~手塚愛子の糸、 モネとシニャックの色~ |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 3月 24日 |
本展覧会のキーワードは「虹色」です。フランスの印象派を代表する「光の画家」とも言われるクロード・モネや、点描を用いた新印象派のポール・シニャックは、目に「見える」色彩を探求しました。一方、気鋭の美術家である手塚愛子は織物を色糸に分解したり、刺繍の表裏や縫われる前の糸を同時に見せたり、過去の様々な造形物を引用して再構成したりするなどの手法で、表面には「見えない」ものを取り出してみせます。今回は手塚の作品をロンドンで制作された最新作を含めて紹介します。 印象派や新印象派は、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の虹色を基本とする絵具をパレット上で混ぜずにカンヴァスに並置することで、視覚の中で光を混合させ明るい画面を作り出す技法である「筆触分割」を用いました。本展覧会では館蔵品の中から、色彩にこだわり「見える」ことを追求した、モネの《睡蓮》連作・《アイリス》やシニャックの《ヴェネツィア》を展示します。 美術家の手塚愛子は布と糸を使って、ものが内包する時間的プロセスや歴史的な蓄積といった、表には「見えない」部分をあらわにします。たとえば、織物から引き出された赤・青・緑といった色糸は絵画における原色の絵具を連想させますが、織られたものを素材に戻すことによって、それらが織られた時間をも示唆していきます。これはもともと表面しか見えない、けれどもそのなかに多重の層を含み持つ「絵画」の制作から出発した手塚の「解体 再構築」の試みと言えます。 冬が終わり、草木も一斉に芽吹く春。アサヒビール大山崎山荘美術館には、カットグラスがプリズムとなって創り出される虹色の光が満ち溢れます。本展覧会は、「プリズム」が光を虹色に分解するように、普段ものを見ている角度にズレ(=ラグ)を生じさせることによって、通常の視線からこぼれ落ちてしまうものを可視化させ、見る者を新鮮な驚きと喜びに導くよう構成されています。 手塚愛子 主な展覧会 2011年3月5日~4月23日 ケンジタキギャラリー(名古屋)、3月11日~4月23日ケンジタキギャラリー(東京)にて個展を開催予定。 【関連行事】 ■ギャラリートーク ※全文提供: アサヒビール大山崎山荘美術館 会期: 2011年3月17日(木)-2011年6月12日(日) |
最終更新 2011年 3月 17日 |