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□と□
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 11月 11日

 

この展示は、「寄せ集めのグループ(a pick-up group)」によってつくられた。もともとは、互いによく知らなかった間柄である。それぞれに力のあるつくり手たちだから、各自の出品だけで終わることだってできたはずだ。けれども僕は、自分の作品展示だけを終えて「ハイ、サヨウナラ」という風な、ありがちなルーティンワークにしたくなかった。

だから負担を覚悟のうえで、若きアーティストたちに幾度にもわたって集まってもらい、互いの言葉を重ねることにした。展示タイトルは、長い話し合いの末、〈 □ と □ 〉に決まった。読み方もすぐにはわからないし、穴埋め問題のようにも見える。だから、このタイトルを見たときに出る咄嗟の反応は、「は?」「なにこれ?」「意味不明!」というものかもしれない。その意味では、この時代に顕著な「わからないこと(the unfathomable)」を象徴するようなタイトルだ。

実は、このタイトルを決めた僕らにだって、明確な答えがあるわけではない。長期的な「危機(crisis)」に瀕していることの自覚された社会では、確固たる答えを、専門家を含めた誰もが知り得ないということが、以前にも増してあきらかになってゆく。そこでは、自分の応えを、自分の言葉と感性でつくりだすことが求められるだろう。そのなかにあって、アートは、同時代にどのように触れ、なにを表現し、担ってゆくのだろうか。表現の世界はこれまで、ある種の「過剰さ(excessiveness)」によって彩られてきたように思う。

不快さや破壊を含め、社会や人びとの心に苛烈な揺さぶりをかける力が、執拗に求められ、勇ましく称賛された。だがまたそうした「過剰さ」は、繰り返されるうちに、それ自身がひとつの陳腐さに行きつくという、虚しい宿命をはらんでもいたように思う。

いま、そのような時代の末期において、ここに集まる作家たちはなにを想うのか。そして彼女/彼らの表現は、なにを伝えてくれるのだろうか。今回の企画はまた、本年度をもって募集停止の決まった造形表現学部の卒業生たちによる展示でもある。昼間に働きながら、あるいは家庭を持ち子育てしながら通う「学生」の多かったこの夜間学部の廃止の決定が、ひとつの時代の終わりに直面した際の人間の判断を象徴しているように、僕には思える。

中村寛(文化人類学者・人間学工房の呼びかけ人・多摩美術大学准教授)

【出展作家】
石原七生、相良裕介、白井晴幸、砂川啓介、堀越達人、M&W from Miles Waters

【関連イベント】
■オープニング・パーティー
2013年11月2日(土) 17:00~

■公開制作
・石原七生による公開制作
会期中の水、木、金曜日 15:00〜18:00(26、27日除く)
※制作が完成次第、公開制作は終了致します。

■トーク・イベント/ライブ
・11月16日(土) 15:30〜/17:00〜
〈トーク〉M&W from Miles Waters・砂川啓介 + 中村寛・海老塚万智・沢辺万智子・森啓輔
〈ライブ〉松谷冬太

・11月30日(土) 15:30〜/17:00〜
〈トーク〉石原七生・相良裕介・白井晴幸・堀越達人 + 中村寛・海老塚万智・沢辺万智子・森啓輔
〈ライブ〉中村公輔

□トーク・ゲスト
海老塚万智(多摩美術大学大学院美術研究科・修士課程、芸術学/ル・クレジオ研究)
沢辺万智子(一橋大学大学院社会学研究科・博士課程、文化人類学/養蚕研究)
中村寛(多摩美術大学准教授/文化人類学者/人間学工房の呼びかけ人)
森啓輔(一橋大学大学社会学研究科・博士課程、社会学/戦後社会運動史/沖縄現代史)

□ライブ・ゲスト
中村公輔(KangarooPaw/the Bootles/作曲家/ミキサー/ライター)
松谷冬太(シンガーソングライター)

全文提供:アキバタマビ21


会期:2013年11月2日(土)~2013年12月8日(日)
時間:12:00 〜 19:00(金土は20:00まで)
休日:火
会場:アキバタマビ21

最終更新 2013年 11月 02日
 

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