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秋山 陽 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2013年 10月 17日

《Metavoid 21》 2013, 陶, 25×157×68 cm
撮影:福永一夫

秋山陽は、学生時代に焼きものと出会ったことで、土の物質性やエネルギーと真摯に向き合いながら立体造形に対する意識を確立し、かつスケールの大きな作品を手掛けてきました。アートコートギャラリーでは、その秋山の力強い造形の動脈ともいえる「根幹」と、秋山が踏み出す次なる一歩の「今」をともにご紹介する新作展を開催いたします。

秋山の初期作品は、黒陶技法を用いた不思議な造形物でした。土に対するコンセプトや表現テーマも未だ見出せない学生時代、興味を抱いていたプリミティブアートや、ブランクーシやアルプといった近代彫刻、師であった八木一夫らの影響を受け、自らが思う形を黒陶によって制作していました。現存しない当時の作品群ですが、それらの中に、秋山は、「今」の自分と通じる「秋山」の姿があると振り返ります。そして自らの1970年代を咀嚼しなおし、当時の黒陶を「今」の手で改めて制作する仕事を始めました。初源を再生あるいは開拓していくとも言えるこの新たな試みに、秋山は「抱卵のかたち」(*鳥が卵を抱いたまま何十年も温め続けている状態)シリーズと名付け、自身の「根幹」の形として約10点を初発表します。

土の現象と造形思考とを融合させ、自然と人為、生成と崩壊、内部と外部などの独自の制作課題を立ち上げ、秋山はさまざまに変容する大地の様相のような力強い造形とともに複数のシリーズを進展させてきました。2003年より手掛けている「Metavoid」シリーズは、物が介在して生まれる空間認識の追求に主眼を置いた作品です。轆轤で成形した大きな器状の内側と外側とを反転させ、形あるものの中に生まれるvoid(中空)と、展示空間を一つの大きな器として捉えたvoidの双方に渡って、物と物を包み込む空間との関係に変容を生じさせます。多層的で動きのあるテクスチャーや、人の知覚とのスケールバランスに至るまで、秋山の追求一つ一つが形として姿を現し、土からさらなる可能性を引き出します。本展では、100~180cmほどの大型作品となる「Metavoid」シリーズ最新作5点。秋山の「今」をご紹介します。

黒陶からの移行時期であった1993年頃より、秋山はサイドワークとして蜘蛛の巣を版にしたモノタイプ制作も始めていました。自宅の周辺で初夏から秋にかけて、毎朝のように出会うという蜘蛛の巣の自然美を留める作品です。昨年から今年にかけて制作された約50点を今回初めて展示空間へと配します。本作は、秋山の造形における「根幹」と「今」を有機的につなぐ展開図のようにもご覧いただけることでしょう。

本展は、いわゆる陶芸という一ジャンルの枠を超え、焼きものを「私たちの足元の大地につくるささやかなしるし」と捉える秋山の大らかな視座、あるいは造形思考をストレートに体感できる展覧会となります。2009年『秋山陽展』にて第17回MOA岡田茂吉賞工芸部門大賞と第52回毎日芸術賞を受賞して以来、アートコートギャラリーでは4年ぶりとなる個展です。どうぞご期待ください。

◆関連イベント: 12月 7日 [土] 14:00 -17:00
14:00 -15:30 ・・・ 対談: 森 孝一(美術評論家/日本陶磁協会 事務局長)× 秋山 陽
15:30 -17:00 ・・・ レセプションパーティー

全文提供:アートコートギャラリー


会期:2013年12月3日(土)~2014年1月25日(土)
時間:11:00~19:00(土曜は ~17:00)
休日:日曜・月曜・祝日 および冬期休廊(12月22日ー 1月6日)
会場:アートコートギャラリー

最終更新 2013年 12月 03日
 

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