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10年代の無条件幸福
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 8月 06日

 

美術史ではなく、アニメや漫画、ゲーム、アイドルなどのサブカルチャーを想像力の源泉とする傾向が日本の現代美術の若い世代の作品に顕著に現れている。それは、若い作家たちや鑑賞者が3.11以後も感情や意志を仮託できるものとして現実の政治や宗教とは無関係な虚構の存在を選んでいることを意味する。 虚構やキャラクターを描くこと自体は、古典的な芸術にも見いだせる。しかし、マルクス主義のようなイデオロギーを共通言語として持たない世代が表現する人間像は、しばしば、大戦を経験した前衛芸術家たちが、政治を風刺したり写実が不可能なほどの絶望を表現したりするために描いた人間像とは違い、「多幸感」に溢れている。 展覧会名の「無条件幸福」は、この「多幸感」を表すネットスラングのひとつで、いわゆる「萌え死」(あまりにかわいいために悶え死にそうになる状態)を意味し、初音ミクやアイドルの歌、動物の動画などを含んだ夥しい数のコンテンツで近年使われている。「無条件降伏」はいかに「無条件幸福」へ変換されたのか。 本展では、戦後日本がこの問いを試す実験場だったという見立てのもと、中村宏(1932~ )と北川民次(1894~1989)ら戦争を体験した世代の作品と、John Hathway 、夢眠ねむ、鎌谷徹太郎、相川勝、石垣克子ら直接交戦のない平和な日本を生きてきた世代の作品を対比し、日本現代美術が映す「ユートピア」の意味を問う。

本展の開催にあたり、ご協力・ご助言くださりました下記の方々に厚くお礼申し上げます。

飯田高誉( 森美術館理事/青森県立美術館美術統括監)
浅川玲子
Gallery Cellar
JH Electronics
sksk

[作家プロフィール]
John Hathway
2004年東京大学大学院物理工学専攻修士修了。同年同大学院博士課程に進学、学術振興会特別研究員を兼任。専攻は物理工学:量子極限物理学。 主な個展に「John Hathwayの世界」(pixiv Zingaro、2011) など。主なグループ展に「芸術と環境展」(上海SHUN ART GALLERY、2010)など。2012年に村上隆がプロデュースするHidari Zingaro Berlinのファサードに巨大壁画を提供したほか、Google+ Cover project、東京スカイツリーなどにも作品を提供。2013年神戸ビエンナーレ審査委員&招待展示予定。

夢眠ねむ
多摩美術大学卒業。アイドル、歌手、映像監督、タレント、モデル、役者、コンテンツプロデュースなど、作品制作から素材に至るまで活動は多岐に渡る。アイドルユニット「でんぱ組.inc」(トイズファクトリー)所属。 写真家 川本史織とのアートユニット「メタポメ」として出展多数。2013年 JAPAN EXPO FRANCE、USAに日本代表として出場(でんぱ組.inc)。個展に「コズミックメロンソーダマジックラブ」(BT gallery、2012)。主なグループ展に「会田誠『美術であろうとなかろうと』」(東京ワンダーサイト本郷、2011)、「シブカル祭。」(PARCO、2011)など。

鎌谷徹太郎
1979年大阪生まれ。Gallery Cellar所属。主な個展に「Paradise Head」(Contemporary Art Gallery、上海、2012)、「Ultra Superficial」(Gallery J☆Chen、台北、2009)など。 主なグループ展に「Masked Portrait」(マリアン・ボエスキー・ギャラリー、ニューヨーク、2008)、「WONDERLAND」(Opera Gallery、香港、2008)など。

相川勝
1978年ペルー生まれ。2004年多摩美術大学メディア芸術学科卒業。主なグループ展に「六本木クロッシング」(森美術館、2010)、「Gateway Japan」(トーランス市美術館、トーランス、2011)、「After Effect」(4A Centre for Contemporary Asian Art、シドニー、2011)など。

石垣克子
1967年沖縄生まれ。1991年沖縄県立芸術大学美術工芸学部絵画専攻卒業。2008年~2011年前島アートセンター理事。主な個展に「大コルク」展(沖縄県立芸術大学附属芸術資料館、2011年)など。 主なグループ展に「Art is My Life」(沖縄県立博物館・美術館、2012)、「黄金町バザール」(横浜市、2008)、「Neo Vessel Areum」(CPS32 Garelly、ニューヨーク、2005)など。

中村宏
1932年静岡県生まれ。1969年、美学校創設に参加。近年の主な個展に「中村宏・図画事件1953-2007」(東京都現代美術館/名古屋市美術館、2007)、「タブロオ・マシン」(練馬区立美術館、2010)など。 近年の主なグループ展に「TOKYO 1955-1970」(ニューヨーク近代美術館、2012)、「実験場1950s」(東京国立近代美術館、2012)など。「ルポルタージュ絵画」の旗手として知られ、その作品は戦後日本美術史において高く評価されている。

北川民次
1894年静岡県生まれ。1914年渡米。1919-1921年ニューヨークのアートスチューデンツリーグにて学ぶ。1978年二科会会長に就任。1986年メキシコ政府よりアギラ・アステカ勲章受章。 主な個展に「北川民次」(愛知県美術館、1996)、「北川民次」(名古屋市美術館/静岡県立美術館、1989)など。主なグループ展に「戦後日本美術の展開」(東京国立近代美術館、1972)、「オリンピック東京大会芸術展示 近代日本の名作」(東京国立近代美術館、1964)など。

髙橋洋介
1985年東京都生まれ。2012年東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。2012年より青森県立美術館エデュケーター/アソシエイトキュレーター。近年の主な企画に「超群島」(表参道GYRE/青森県立美術館、2012、アソシエイトキュレーション)、杉本博司「創造の起源」(講演会、東京藝術大学、2010)など。 近年の主なテキストにジェフリー・ダイチ「ポストヒューマニズムと芸術」(ロサンゼルス現代美術館館長インタビュー、『Realkyoto』、2010)など。


全文提供:eitoeiko
会期:2013年8月15日(木)~2013年9月7日(土)
時間:12:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:eitoeiko
最終更新 2013年 8月 15日
 

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