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アレグラ・パチェコ:Boobs in Japan
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 7月 23日

 

GALLERY MoMo Projectsでは7月20日(土)から8月10日(土)までアレグラ・パチェコによる個展「The Boobs in Japan」を開催致します。

アレグラ・パチェコは1986年コスタリカ生まれ、2011年スクール・オブ・ビジュアルアーツ(ニューヨーク)写真学科卒業、現在ウィンブルドン・カレッジ・オブ・アーツ(ロンドン)修士課程に在籍しています。

このたびバッカーズ・ファンデーションとNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT)の招聘により、東京でのアーティスト・イン・レジデンス・プログラムに参加し、その成果を山本現代(白金)にてグアテマラ出身のアルベルト・ロドリゲス・コジアと共に発表するのを機に、幅広い表現活動の一端を当ギャラリーにて展示致します。

パチェコは主に写真やドローイングを媒体に、それぞれの国の生活を通して、社会や都市構造の違いに目を向け、異邦人だからこそ見えて来る不思議さや思いがけぬ出会いを写し取ります。今般の山本現代での展示はそうした視点に立った写真やドローイング作品が予定されていますが、当ギャラリーでは2012年コスタリカで開催された「The Boobs (乳房)」を日本版として再構成し展示する予定です。  

この展示では、コスタリカのラ・カルピオ地区の女性たちとの共同作業により制作された乳房の形をしたソフト・スカルプチャーで会場を埋め尽くし、作家自身が壁一面に描いた壁画で包み込み、多くの女性の共感を得ました。この立体作品の中には、企業で廃棄処分になった未使用の生理用ナプキンやおむつが内容物の一部として用いられました。制作に協力した女性たちは人道団体で働く移民女性で、「The Boobs」は彼女たちの労働環境や社会的な立場を想起させ、社会の中で不可視になりがちな抑圧構造をユーモラスに浮かび上がらせました。また、この作品の売り上げは全て、その地区の女性支援にも充てられました。

女性のシンボルとも言える乳房は、性的な意味合いと同時に、生まれたばかりの子供が最初に口にするものとして、生命の始まりの意味合いも含まれています。そうした点で、彼女の作品は乳房という体の部位を表す言葉よりも、稚拙な「おっぱい」という言葉の方がしっくりきます。この立体作品の内容物として女性用ナプキンやおむつを用いたのも、女性しか持ちえない生理現象と、生み育てるという女性の持つ特性を内包させ、それらをボリュームのある表情豊かな乳房で包み込んだ点に、作家の女性に対する慈しみが感じられます。

コスタリカでの展示は母として、妻として、また労働者として苦しい環境に立たされている女性たちを示唆し、多くの支持を集めました。日本で抱える女性問題はそうしたコスタリカの女性の持つ問題ほど深刻ではないものの、先進国に比べまだまだ多くの課題が山積しています。

ノマドとして、ニューヨーク、ロンドン、東京と、それぞれの世界を見てきた作家の視点で構成されたアレグラ・パチェコの「The Boobs in Japan」展を通じ、日本人が今まで気づかなかった我々が抱える女性の問題を浮き彫りにし、異なる社会と文化から見える日本のジェンダーについて考える場となれば幸いです。  

また、コスタリカでの制作過程と同様に、60歳前後以上の日本の女性たちに今回展示予定のクッションなどの制作にご協力をお願いし、作家や作品制作を通して、文化交流、世代間交流の場を作り、記録し作品とともに展示する予定です。今回、作家が年齢層を限定した理由は、高齢社会の日本を反映させる意味合いだけでなく、日本における女性の文化の発展や社会的地位において大きな影響を与えてきた団塊の世代を映し出すことで、どのように日本社会が女性の権利や問題に対して取り組み変容してきたかを浮き彫りにしたいという意図があります。アレグラ・パチェコが持つ多様な表現を山本現代の展示と合わせてご高覧いただければ幸いです。

[作家コメント]
いつも自分の作品について話すことに難しさを覚え、よく作品は自画像の集積であると示唆しています。
距離を置き、中立のレンズで見ようとした時、どのように人が環境に関わり、形作るのか、関係をとらえ、表出させるのか、また、自然への無防備な敬意というような共通の建築への脅威を感じます。
私は直感からシャッターをきり、写真が作品自身を代弁するように撮影しています。見る人たちができるだけ多用に、もしくは、できるだけ限られた解釈ができる視覚的な自由を許す手段として、私は様々なメディアを利用しています。
アイディアや 話し言葉のフィルターを介して視覚に実行を強いることのない批判的な雰囲気の感情を発信しようとしています。また、作品自体に 親しみやすさ、静けさ、心地よさだけでなく、他者との間で学んだ考えに挑戦することなど多種多様な感情を表現することができ、その作品自体で直面しているイメージを越えて、ある感情を伝えるような作品を作ろうとしています。

Allegra Pacheco

全文提供:ギャラリーモモProjects
会期:2013年7月20日(土)~2013年8月10日(土)
時間:12:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:ギャラリーモモProjects
最終更新 2013年 7月 20日
 

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