井上裕起は、サラマンダー（山椒魚）という異なる生物の視点を借りて、世界の様々な事象や歴史・ 文化を 10 年以上にわたって一貫して切り取り続けてきた作家です。一方で作家の内面の反映、分身と も言えるその生物は、これまでも時代精神や作家の心情とも密接に同期し、時にユーモラスに時にシニ カルに、様々な形態へと変容してきました。
2010 年にスパイラルガーデンで開催された、天明屋キュレーションによる BASARA 展にも大作を出 展していた作家です。BASARA とは、室町時代の婆娑羅大名や戦国末期のかぶき者、幕末の絵師などの気 風にも通じる華美で型破りな美意識です。サラマンダーという奇異なモチーフで、変幻自在に世俗を斬 り裂いていく井上の作風は、まさに BASARA と呼ぶにふさわしいでしょう。
「VECTOR(ベクトル＝方向)」をテーマにした今展では、刺青のサラマンダーがサーフィンを行う体 長約 2m の大作をメインに展示。両生類が住み慣れた水中から初めて陸上に移る時、その覚悟と過去と の決別を、人間的な刺青に込めて表現します。またサーフィンというモチーフには、波に翻弄されなが らも陸を目指す、すなわち自らの道を切り開き「波に乗る」という作家自信の決意も込められています。 その他、サラマンダーの小品数点も合わせて展示いたします。この貴重な機会をぜひともご高覧くださ い。

［作家プロフィール］
1972 神奈川県横須賀市出身
1998 多摩美術大学美術学部彫刻科卒業
2000 多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了

＜主な個展＞
2013 「salaMandara / 108」 新宿髙島屋（東京）
2011 「salaMandala / INSIDE THE OUTSIDER」和田画廊（東京）
2010 「salaMandala / NIPPON-IDOL」和田画廊（東京）
2009 「salaMandala / NIPPON-ISM」和田画廊（東京）
「salaMandala / NIPPON-IDEA」ギャラリー中井（京都）
2008 「salaMandala / NIPPON-IDEA」和田画廊（東京）
2007 「salaMandala / MINES#2」和田画廊（東京）
「salaMandala / EDEN」和田画廊（東京）
2005 「salaMandala / CHAIR」ギャラリーなつか b.p.（東京）
2003 「salamander」ギャラリーなつか（東京）

＜主なグループ展＞
2013 「幻～Phantom」新宿髙島屋（東京）
2012 「Artistic Christmas vol.Ⅵ」新宿髙島屋（東京）
2010 「Artistic Christmas vol.Ⅳ」新宿髙島屋（東京）
「BASARA 展」スパイラルガーデン（東京）
「The Art Showー日本−」和田画廊（東京）
2009 「真夏の夢」椿山荘（東京）
2008 「NETWORK PROJECT JAPAN」インターアリア アートカンパニー（ソウル、韓国）
「The House」日本ホームズ住宅展示場（東京）
「ROUND2008」ギャラリーなつか（東京）
2006 「第 25 回損保ジャパン美術財団選抜奨励展」損保ジャパン東郷青児美術館（東京）
「白と黒ってどう？」ギャラリーコンセプト 21

オープニング・レセプション：7 月 23 日（火） 18：00 ー 20：00