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ignore your perspective 18「Fascinating Analysis」
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 4月 16日

 

児玉画廊|京都では3月30日より4月27日まで貴志真生也、高石晃、 田中秀和、中村奈緒子、森下明音、吉田純也の6名によるグループシ ョー ignore your perspective 18「Fascinating Analysis」を下記の通 り開催する運びとなりました。本展は、この6名が作品制作の典拠と しているであろう6つの要素を各頂点とした多角的視点から美術制作 のアティテュードを分析し考察する展覧会です。

[素材] 貴志真生也
単なるモノとしての素材が如何にして「作品」へと変わるのか、そ の境界を探るように、立体、インスタレーションを制作し続けて来た 貴志。素材をいろいろと触りながら、頭の中でイメージとミュレーシ ョンを繰り返し推敲して得た方法で加工を施す、そしてその結果がま た新たなイメージの典拠となって次の行程へと進むのです。素材を起 点としてイメージの発想と飛躍を繰り返しながら、不必要な意味や無 用の構成物を排除し、極力シンプルな形態へと落とし込むことで、端 的ながら誰もが見たことのないものが出来上がるのです。

[幻夢] 高石晃
高石の作品は、夢の中での混沌とした出来事のような不条理を道理 として、あるいは結果から原因を導き出すような逆算的な思考法によ って、非現実的な情景を描き出します。寝覚めに朧げな断片を辿って 夢の追体験をするように、謎めいた夢想が手中から逃げ出さない内に 留め置くような強く荒い筆触によって描かれています。最近作ではと ある線描をおもむろに描いた後に、それを取り巻く背景を加筆してい くという作品を制作しています。背景に加えられたものとの関係性に よって始めて最初に描いた線の意味合いや理由が与えられるという溯 行的制作方法を敢えて取るのは、高石の作品イメージの現出が夢か幻 のように類型的なやり方では測りがたいものであることを示している のでしょう。

[引用] 田中秀和
田中は、自身のペインティングやドローイングの線描を作品間で引 用/複製することによって、遺伝情報のように時間と空間を経て伝達さ れる自律的な存在であるかのような抽象絵画を追求してきました。引 用された線描はその都度整形やリサイズなどの新たな手を加えられ、 際限なく進化を続け、さらに新たな手法へと拡張していくのです。今 回発表する作品は、普段のキャンバスやウォールドローイングではな く、巨大なポリエステルフィルムに過去作から引用した線描をラテッ クスでドリッピングしたものを、中空に吊り上げた状態から落下させ て無造作にグシャグシャにするものです。フィルムの透過性によって 幾重にも折り重なった襞の中で線描が複雑に交錯します。平面性から 空間性への飛躍が落下の瞬間に一挙に引き起こされます。

[手法] 中村奈緒子(新人)
中村は主にインスタレーション作品を制作しています。2枚の板に延 々と穴を開けて延々とビニール紐を通してモチーフを描く刺繍を引き延 ばした様な作品、木材を膨大にカットして小口に色を塗ったものを積 み上げて巨大なモザイク壁画の様にした作品など、無限にも思える作業 量を必要とする行程を敢えて選び、過度に手作業へと没入していくこと によって制作されます。ドット絵のようなローテクさや、手芸的で愛ら しい表現や親しみやすい素材・形状でありつつも、しかし軽く狂気を感 じさせる程に「延々と続く手仕事」によって、中村は手からイメージを 形成しているのだと強く感じさせます。

[構造] 森下明音(新人)
パラフィンや油彩など元々は液体状の色彩が、塗り固められて物質性 を帯び最終的に固定されるそのプロセスに作品の主題を求めた作品を制 作しています。ロープ、ワイヤー、メッシュといった心材を呑み込む様 にして凝固した色彩の塊が、どのようにして空間に屹立すべきか、自立 する構造的な方法論を探る様にして作品の在り方がシフトして行きます。 吊り下げる、台に乗せる、突っ張る、もたれ掛かる、など様々な様態を 示しながら、その都度それを具体的にクリアするための実際的な構造が 示され、色彩や造形と並んで作品を成す一つの重要な要素として認識さ れています。

[詩情] 吉田純也(新人)
吉田は平面、インスタレーション様々な作品を制作発表しています。 思い描いたイメージを思うままに描き、そのものの在る様に意味合いを 掬い上げて作品とするような詩作にも似た作品は、物質性の背面に有る 吉田の内面性、精神性の表出と捉えられます。本展では、ごく私的で感 情的な物であったり、誰かの忘れ物か廃品のようなどうでもよさそうな 物など、つかみ所のない雑多な物や要素が散逸したようなインスタレー ションを展示します。作品によって何かメッセージを発するというより も日記の端に吐露した思考の断片のようにささやかな、しかし吉田個人 の存在定義に関わる様な根元的な主題を、訥々とそこに晒しているので はないかと思えます。

これまでのignore your perspective で児玉画廊ならではの視座として 示してきたような作品同士の緊密な相互関係や渾然一体といったニュア ンスではなく、それぞれの作家が共存しつつ、なお一線を引いて不干渉 でもあるような、引力と斥力の絶妙な均衡を取った群像として6名の作 家を紹介致します。

敬具
2013年3月
児玉画廊 小林 健

出品作家: 貴志真生也、高石晃、田中秀和、中村奈緒子、森下明音、吉田純也

同時開催: Kodama Gallery Project 37 五藤 彰「TRY-MEN」


全文提供:児玉画廊 | 京都
会期:2013年3月30日(土)~2013年4月27日(土)
時間:12:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:児玉画廊 | 京都
最終更新 2013年 3月 30日
 

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