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Works by Edition Works
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 3月 11日

東恩納裕一 《untitled》 2013 (C)Yuichi Higashionna, Courtesy of Yumiko Chiba Associates

2013年3月22日(金)より、Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku にて、エディション・ワークス企画協力による版画作品展、“Works by Edition Works” を開催いたします。
エディション・ワークスは、エッチングやリトグラフ、木版画、シルクスクリーン、デジタルプリントなど、制作可能な技法とサイズにおいては日本で最大級の版画工房です。その活動はアーティストやギャラリー、出版社からのオーダーにとどまらず、独自の企画出版なども手がけ、版画表現の可能性を高め続けています。また、様々なジャンルの優れたアーティストたちの技術スタッフとして活動を支え、彼らの制作意図を細かく引き出す姿勢は、国内外で高い評価を受けています。
本展では、エディション・ワークスの企画協力を得て、ジャンルの異なる 2 名の作家、東恩納裕一と鷹野隆大の版画作品を展示いたします。
版画には常に素材の持つ実体があり、それは作家自身の身体の痕跡や行為の記録にもなりえます。デジタル化が進む仮想的な現代において、この実体感は存在の証ともいえるものであり、それゆえに、作家そして鑑賞者までもが、それを求める気持ちが強くなるのではないかと考えます。本展は、版画の意味を改めて探る試みです。ぜひ、ご高覧ください。
また、会期中にはエディション・ワークス加山氏、東恩納裕一、鷹野隆大とのトークイベントを開催いたします。合わせてご案内申し上げます。

[作家コメント]
■展覧会に向けて

「版画って何?」「今の世の中、何のために版画があるの?」という問いは、近年特に強く感じます。
急速な科学技術の進歩を伴いながら社会情勢は目まぐるしく変わり、アートの世界もすっかり様変わりしたかのようです。そんな中、版画はどこかに置き忘れられた遺物となってしまうのかと思われました。
絵画や彫刻も同じですが、少なくとも数百年用いられてきた材料と技法で作るという、版画には非常に伝統的な側面があります。
そしてまた、紙やキャンバスに直接描いたのでは得ることの出来ない表現と複数性が、その時代毎に表現の革新をもたらしてきた側面もあり、視覚芸術の中で大きな役割を果たしてきたと言えます。
版画はこの 100 年ほど、技法や制作部数など、色々なことを限定することで成り立ってきました。
しかし、その限定の意味がぼやけている今、最後に残る限定要素は「版を用いて作られた、実体を伴った複数性のある作品」ということだけになってきました。存在理由が、より純化されたのかもしれません。
出来上がった作品が手作り感溢れるものであれ、それを廃した表現であれ、版画には常に素材の持つ実体があります。デジタルでバーチャルな世の中になればなるほど、アーティストにとっても観る側にとっても、そのリアルな実体感や身体性を求める気持ちは強くなるのだと思います。
有限会社エディション・ワークス 代表取締役 加山智章


■デジタルプリント作品 : 「FL」について
写真の誕生によって、私たちが初めて知る/見ることになった“ネガ”の存在が、デジタルの登場によって、いまや、忘れられつつあります。今回
のプリント作品は、インクジェットという版(ネガ)ナシの“版画”の特質を倒錯するように、あらかじめイメージはネガに反転されます。 “シャンデリア”シリーズをモチーフに、蛍光灯(FL)が生み出す過剰な明るさを逆照射する黒い/暗い光、デジタルによるデジタルへのアイロニー、 “ネガ”
を喚び戻そうとする、21 世紀の降霊術・心霊写真というアレゴリー・・;!?)。
Feb.24,’13 東恩納裕一


■版画写真
版画と写真は似た者同士である。それゆえ、少し前であれば異なるところを探し出して強調することとなったであろうが、写真感材が縮小の一途を辿るいま、銀塩に代わる技法としての可能性を追求してみることにした。たとえば写真のもつ描写力をどこまで再現できるのか。あるいは白と黒のグラデーションはどうなるのか。それは写真について改めて問う作業になるはずだが、例によって未だ途半ばである。
2013 年2 月 鷹野隆大

[作家プロフィール]
有限会社エディション・ワークス
1984 年、文化庁芸術家在外研修員としてタマリンド、ニューヨークでの研修を終えた瀬越義満氏により、東京・渋谷区に設立。翌年より、現在代表を務める加山智章氏が参加。その後、加山氏も文化庁芸術家在外研修員としてローマにて研修。版種を広げながら活動を展開、画廊や出版社、作家からの依頼に応じながら、独自の企画出版も手がける。現在は東京・調布市に所在。
http://www.editionworks.jp/


加山智章 / Chiaki Kayama
1960 年京都市生まれ。有限会社エディション・ワークス代表取締役。
赤川版画工房にて、銅版画・リトグラフのプリンターとして活動を始める。1983 年より岡本工房(彌生画廊主催)で有元利夫や若林奮の作品を制作。1985年よりエディション・ワークスに参加。若林奮、サンドロ・キア等、国内外の現代美術の作品制作に携わる。1992から94年まで、文化庁芸術家在外研修員として 2 年間ローマに滞在。二つの版画工房での研修に加え、手製本、紙と本の修復なども学ぶ。
帰国後、エディション・ワークスに復帰し、青木野枝、赤塚祐二、辰野登恵子らの作品を制作。1997年、エディション・ワークスの法人化に伴い代表となり、現在に至る。


東恩納裕一 / Yuichi Higashionna
東京生まれ、東京在住。アーティスト。
代表作として、蛍光灯によるシャンデリアシリーズ、造花やチェーンをスプレーペイントで型取った FL(Flower)シリーズなど。
主な個展に、「FL」 CALM & PUNK GALLERY / NADiff GALLERY(東京、2012 *2 会場同時開催)、「Apparition」Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku(東京、2012)、「Fluorescent」 Marianne Boesky Gallery(ニューヨーク、2011)、「Venice/Tokyo」Venice Projects(ヴェニス、2010)、武蔵野美術大学 80 周年記念展「変成態-リアルな現代の物質性 Vol.4」gallery α M(東京、2009)など。主なグループ展に、「Masked Portrait Part I & II」Marianne Boesky Gallery(ニューヨーク、2008,2011)、「Glasstress 2011」ヴェネチア・ビエンナーレ(ヴェニス、2011) 、「The New Décor」Hayward allery(ロンドン、2010)、「六本木クロッシング 2007 未来への脈動」森美術館(東京、2007)など。


鷹野隆大 / Ryudai Takano
1963 年福井県生まれ。写真家。
1994 年から作品を発表しはじめる。2006 年にはセクシュアリティをテーマにした写真集『IN MY ROOM』(蒼穹舎)で第 31 回木村伊兵衛写真賞を受賞。身体や性といったテーマの他、近年は都市にも興味を向けている。2010 年、鈴木理策、松江泰治、倉石信乃、清水穣と「写真分離派」を立ち上げる。主な個展に、「立ち上がれキクオ」ツァイト・フォト・サロン(東京、2012)、「モノクロ写真」Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku (東京、2012)、「金魚ブルブル」ツァイト・フォト・サロン(東京、2010)、「おれと」ナディッフ アパート(東京、2009)、「公開制作 46 記録と記憶とあと何か」府中市美術館(東京、2009)など。主なグループ展に、「液晶絵画STILL/MOTION」東京都写真美術館(東京、2008)、「Beyond The Border」Tangram Art Center(上海,中国、2010)、「木村伊兵衛賞 35 周年記念展」川崎市民ミュージアム(神奈川、2010)、「PARIS PHOTO 2008」カルーセル・ドゥ・ルーヴル(パリ,フランス、2008) 、「高松次郎|鷹野隆大 ”写真の写真”と写真」太宰府天満宮 宝物殿(福岡、2009)など。

■トークイベント
2013 年 4 月 6 日(土)
加山智章(有限会社エディション・ワークス代表取締役) × 東恩納裕一 × 鷹野隆大エディション・ワークス加山氏の活動から版画について、また、作家 2 名を交えて本展の展示作品についてお話いただきます。
*開催時間等、詳細につきましては、ユミコチバアソシエイツの web サイトにてご案内いたします。


全文提供:ユミコ チバ アソシエイツ VIEWING ROOM-shinjuku
会期:2013年3月22日(金)~2013年4月13日(土)
時間:12:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:ユミコ チバ アソシエイツ VIEWING ROOM-shinjuku
最終更新 2013年 3月 22日
 

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