昨年末より水戸芸術館クリテリオムにて個展を開催し、今年 3 月より上野の森美術館での VOCA 展 2013 へ出展するなど、友政麻理子は独自のアプローチによる映像、写真表現によって、いま注目を集めています。 弊ギャラリーで初の個展となる本展では、2010 年より制作を続けている「トレーニング」シリーズの新作を発表します。「トレーニング -and then, we will climb the raimbow-」とは、色とりどりの衣服を身に付けた人が、運動の残像によって「虹をつくること」を目指す行為の一瞬を切り取った写真作品です。本展覧会では、その「トレーニング」の過程をビデオで捉えた映像作品も展示されます。人と人との関係性の中に「型」や「フレーム」を投げ入れることによって、他者との交感可能性に迫ろうとする友政の作品を、ぜひこの機会にご覧下さい。

［作家コメント］
髪型を変えただけなのに、出くわした相手に喜ばしいような表情で「痩せた？」と聞かれたことが度々ある。病気をした祖母は、医者や家族から「こんなリハビリ運動をしたら、もっと速く歩けるようになりますよ、手がこんなに振れるようになりますよ」と励まされ、リハビリをがんばっていた。私はこれらの経験から、他者によって歓迎される身体の形＝型というものに興味をもった。
筋肉トレーニングを扱った本ではよく、「使っている筋肉をイメージしなさい」というようなフレーズが出てくる。そうして筋肉のありかをイメージしながら筋トレを行うと、イメージしていなかったときとは違い、その筋肉へ負荷のかかる率が高くなる。スポーツのイメージトレーニングでも、目の前にいない相手の動きを想像してトレーニングが行われる。さらに寝ているときにも、夢で見ている運動をしようとして、それが夢だと気付かないままに、実際の筋肉を動かしてしまうことがある。
「イメージ」をもった動きによって身体は形づくられる。そして人々は自分の身体のみならず、他者の身体にもさまざまなイメージを投影する。
私の身体は、他者と私のイメージの交差点に形づくられている。それなら、求められる身体を目指してトレーニングやエクササイズを続け、身体の形＝型を変形させていけば、私と他者が別々に希望するものの交差する場所を、具体的な身体の「形」として表せるのではないかと考えていた。そういったトレーニングによって作られた身体の形は、私と他者が共同作業で作り上げた、どちらの所有物でもない「型」となるのではないかと考えた。それはまるで、ふとできてしまった空き地のようなものだ。
「トレーニング -And then, we will climb the rainbow-」は、虹を作ることを目指して行われたトレーニング、リハビリの写真だ。運動は自身の体で、各々独自に行われた。しかし、私たちは各々の身体に負荷をかけながら、「虹」というイメージを中継点にして、遠く離れた他者と交信をしようとしていたのではないだろうか。

友政麻理子

［作家プロフィール］
友政麻理子　Mariko Tomomasa
1981 年、埼玉県生まれ。東京藝術大学大学院美術博士課程修了。
主な個展
2012 　“ 友政麻理子 ”　水戸芸術館クリテリオム ( 茨城 )
2011 　“Mariko Tomomasa exhibition” 藍画廊 ( 東京 )
2007 　“ カミフブキの家 ” GALLERY OPEN DOOR ( 東京 )
“ カミフブキオンセン ” みなかみ町旧水上町役場 ( 群馬 )
2006 　“ 家族会議　̶家を建てるー ” GALLERY DEX ( 神奈川 )
2005 　“Mariko Tomomasa exhibition - 家族会議 -” FUTABA gallery ( 東京 )
主なグループ展
2012 　“ 国民の祝日 ”TALION GALLERY ( 東京 )
“THE 11th GUNMA BIENNALE FOR YOUNG ARTISTS” 群馬県立近代美術館 ( 群馬 )
2011 　“JAPAN TODAY” Pino Pascali Museum (Polignano a Mare、イタリア )
2010 　“Videozoom: Giappone ‒ Reframing the Everyday”Sala 1 ( ローマ)
2008 　“Kanazawa Art Platform 2008” 金沢 21 世紀美術館 ( 金沢 )
“THE 9th GUNMA BIENNALE FOR YOUNG ARTISTS” 群馬県立近代美術館 ( 群馬 )
2004 　“Picture in Motion” 栃木県立美術館 ( 栃木 )
2003 　“muc-tok” Akademie Der Bildenden Kunsste ( ミュンヘン )
2000 　“drawing 2000” 東京芸術大学美術館取手館 ( 茨城 )
Workshop
2009 　“～トンシュトンシュ♪…ポッポー♪～美術館に “ ウツクシイ ” を探しにいこう !!!” 埼玉県立近代美術館 ( 埼玉 )

＊ギャラリートーク
日時 　3 月 16 日 ( 土) 19:00 - 21:00
会場 　TALION GALLERY
東京都台東区谷中 3-23-9
定員 　30 人（予約制）
※ご予約方法はギャラリー Web サイトをご覧下さい。
入場料 　¥1,000（1 ドリンク付）
ゲスト 　近藤健一（森美術館キュレーター）
友政麻理子（美術作家）
他ゲスト 1 名予定