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白井美穂 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 6月 17日

copyright(c) Mio SHIRAI

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「Forever Afternoon 永遠の午後」
白井美穂の短編映画は伝統的な物語や神話を成熟した観客の為に語り直しつつ、そこに不可思議で不条理な感覚やサスペンス性を吹き込んだものである。彼女自身の言葉を借りれば「道を踏み外す」感覚である。

昨年はイギリスと日本が公式に通商条約を結んで150周年であり、1858年まで日本は西洋に対して鎖国していた。その年、イギリスの文明と産業経済を学ぶため日本から使節団が派遣された。白井の作品「永遠の午後」はこのことと架空の物語「不思議の国のアリス」を絡み合わせたものである。白井自身が演じたアリスは150年前にイギリス北東部を旅し、日本に異なる考えを持ち帰った使節を象徴する。冒頭のロケーションはアリスを奇妙で見慣れぬ世界に引き入れる。ルイス・キャロルがアリスを巡って書いた場所の多くはこの近辺である。土地の美しさが彼女を新しい状況と出会いに導いていく、それが狂った帽子屋のお茶会だ。物語のいくつかの局面は西洋を訪問中の日本の使節団の役と反響し合う。アリスは「なんて失礼な!(thatʼs not very ʻcivilʼ of you!)」と三月ウサギに言うが、彼らの訪問の目的はヨーロッパの文明(ʼcivilizationʼ)を学ぶ事にあった。そうして物語は優雅さと野蛮さの狭間に地滑りして行く。写真作品もまたキャロルの理論と言語ゲームにおける対比の連続を視覚化しており、一連のドローイングは白井の仕事の幅広い感覚と想像力豊な制作過程を明らかにした。
- アリステア・ロビンソン(Northern Gallery for Contemporary Art) のテキストより抜粋

白井美穂
1988年東京芸術大学大学院美術研究科修了。1993年アジア交流基金日米芸術家交換プログラム。(ニューヨーク)1980年代後半より活動を開始する。既製品を組み合わせて不条理感やずれを生み出し、日常的な認識に異議を申し立てるコンセプチュアルなインスタレーション作品により、早くから注目された。近作ビデオ・インスタレーション「芸術についての三部作」では、コミカルな要素を交えながら、創造行為のうちに存在する様々な次元を明らかにしている。主な展覧会は、第7回インドトリエンナーレ、「ザ・サイレント・パッション」(栃木県立美術館)、「Bolande, Dopitova, Rist, Shirai」(プラハ市立美術館)、「Kunst Heimat Kunst」(クンストラーハウス、グラーツ)、越後妻有アートトリエンナーレ、「アーティスト・ファイル 2008」(国立新美術館)

※全文提供: BankART1929

最終更新 2009年 6月 26日
 

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