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今津景:PUZZLE
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2013年 1月 18日

(左)サルダナパールの死の為の習作,2012
H194xW194cm
キャンバスに油彩
(右)サルダナパールの死,2012
H194xW194cm
キャンバスに油彩

今津景は多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業、同大学大学院美術研究科修了、在学中より国内のギャラ リーを中心に作品を発表し、2009年のVOCA展(上野の森美術館)では佳作賞を受賞。近年ではアジアでの展覧会 に出展するなど精力的に活動を続けております。
今津はインターネット上の画像、雑誌の中の写真、自身の生活空間にある家具やスクラップなど、互いに所在を 共有し得なかった様々なモチーフをコンピューター上で再構築し、絵画に落とし込むことで仮想世界を実体化し てまいりました。
前回、山本現代で開催いたしました今津景個展「フラッシュ」(2010年)では鮮やかな色彩と極端なコントラスト により、光そのものへの認知が先立ち、崩壊した建物や災害を連想させるガラクタなど、背景に描かれた悲惨な 状況への理解が二次的に生ずるという見る側の知覚を浮き彫りにし、平面の二層化を試みました。 今回の個展「PUZZLE」ではドラクロワの『サルダナパールの死』、マネの『草上の昼食』、広重の『東海道五十三 次』など、過去に描かれた絵画より構図を引用し、その上に様々なモチーフを配置することで、各原作が持つ意 味の変換を試みます。
『サルダナパールの死』は元来アッシリア王サルダナパールが反乱軍によって滅ぼされる情景を描いた歴史画で すが、本展で展示される同タイトルの作品には人物が描かれておらず、原作の構図に沿いコンクリートブロック や木片などの廃材が画面内に散在しています。これはアッシリア王の惨劇を現代のカタストロフィーに置き換え たと解釈することも出来ますが、あえてデッサンの整合性を無視し色として置かれたモチーフからは、線よりも 色の配置で構成されたドラクロワ絵画の特徴を暗示していることも読み取れます。
この度展示いたします新作は、歴史的絵画を1つのレイヤーとして自身の作品に加え再編成することで、本来持 っていた意味をリセットし、構図・彩色といった技法的側面を顕在化、また新たに並べられたモチーフより生ず る意味合いを模索しています。

[作家コメント]
PUZZLE

私にとって制作で重要なのは、イメージを組み立てる事です。
S120号の2点の油彩作品については、1827年に描かれたドラクロワの『サルダナパールの死』から構造を得ています。
これらの制作にはPCを使い、自分で撮影した部屋に吊るされた衣服やアクセサリー、震災で流された石巻の父の工場跡のがれき、ネットで見つけ出した家具、スクラップなど、個々で完結していた様々な画像をそれぞれ切り抜き、拡大縮小、色彩調整をし、ひとつの画面に再配置しながらまとまった空間へと組み立てていきます。
思い入れのある身近なものから全く興味の無いものまで切り取られた様々な画像は、かたちだけを残したまま過去の絵画の物語や構造の中で新たな意味を宿したり、役割を変化させていきます。
『サルダナパールの死』はアッシリア王が反乱軍に倒される情景を描いたもので、自分の寵馬や妾たちが殺害されていくのを自らの死を前に王は何事もないかのように寝そべり冷然と眺めている様を演劇のワンシーンのように鮮やかに描き出しています。ひとときの栄華とその崩壊というカタストロフィーと共に、画面を横断する鮮やかな色彩の流れというドラマティックな構図を持っています。
この舞台の中に私が配置した家具や衣服といった画像は、馬や妾の悲劇を下敷きに、現代のカタストロフィーを想起させたり、また線・面・量といった絵画的な要素に置き換わっていきます。
新・旧・異次元のモノは2次元の画面上にまるで等価に配置される事で違和感や非現実性、またそれが現実を連想させるという矛盾、両面性を生み出します。
こうした一連の作業は、私が拾い集めた画像が過去に描かれた絵画空間の中でどのように作用するのかという実験や遊びのようなものともいえます。
今津景

[作家プロフィール]
今津景 IMAZU Kei

1980 山口県生まれ
2005 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
2007 多摩美術大学大学院美術研究科修了

個展
2006 今津景展、Gallery b.Tokyo
2007 今津景展、Gallery b.Tokyo
2008 今津景作品展、NICHE GALLERY、東京
2009 今津景展、野田コンテンポラリー、名古屋
2010 フラッシュ、山本現代、東京
第 26 回作品展 ANA MEETS ARTS 今津景、ANA 羽田空港ラウンジ、東京
2012 SHINING REPLACE、第一生命ギャラリー、東京

グループ展
2005 谷中日和、GalleryJ2、東京
2006 百花繚乱、BOICE PLANNING、神奈川
第三回 REUNITED 展、横浜市民ギャラリーあざみ野、神奈川
2007 ニッチ・ヤングアーティスト展、NICHE GALLERY、東京
上海芸博会青年芸術家推介展「アジア」
アミューズアートジャム、京都文化博物館 5F、京都
2008 Who\'s Next、MUSEUM at TAMADA PROJECTS、東京
EX-SURFACE、アトランティコギャラリー、東京
Women Without Boundaries」ART LABOR GALLERY、上海
These Artists Are Good!、野田コンテンポラリー、北京
2009 ARTIST IN OHIRA-SO STUDIO vol.1、黄金町バザール大平荘スタジオ、神奈川
VOCA 2009、上野の森美術館、東京
2010 JAPANESE COLORS、GALLERY IHN、韓国
2011 カルチャー、アート・センター・オン・ゴーイング、東京
Girlfriends Forever!、トーキョーワンダーサイト本郷、東京
2012 Painting Never Dies、YUKA TSURUNO、東京
ブラインド・サイト -盲視の知覚、MA2Gallery、東京

受賞
2004 東京ワンダーウォール入選
2006 シェル美術賞入選
2009 VOCA 2009 佳作賞受賞 、上野の森美術館

オープニングレセプション:2013 年 3 月 2 日(土) 18:00-20:00


全文提供:山本現代
会期:2013年3月2日(土)~2013年3月30日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:山本現代
最終更新 2013年 3月 02日
 

関連情報


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