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AUTUMN LEAVES FIELDS
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 12月 06日

Gabriele Sturm「paradiese bird」2010
デコラージュ、ドローイング
DeCollage and Drawing 52×31cm

三田村光土里「parking」2012
紙に水性インク、トレーシングペーパー
water ink pen on paper and tracing paper 21.0×29.7cm

このたび、Bambinart Galleryでは、“AUTUMN LEAVES FIELDS”と題しまして、Edgar Honetschlager、Gabriele Sturm、Martin Walde、三田村光土里の4名のアーティストのドローイングによるグループショウを開催いたします。

ウィーン分離派がクリムトを中心に結成され、展示施設「ゼセッション美術館」が建設された19世紀末。様々な文化、思想にめざましい影響を与えた19世紀末ウィーンは、芸術においても、それまでのアカデミックな体制に別れを告げる自由で斬新な芸術家が現れ、その精神は現代のウィーンのアーティストたちにも受け継がれています。この街が、ヨーロッパのあらゆる民族、言語があつまる独特の都市文化が花開いた場所であることは、アーティストの作品に、政治や歴史、社会環境への深い考察と問題提起を与えています。

一方でその表現は、軽やかで美しいスタイルに支えられ、コンセプトだけが強調されることはありません。ユニークな方法でコンセプトを多様に展開しながらも、視覚的な美を追求するスタイルは、ドローイングに顕著に観ることができるでしょう。

[作家プロフィール]
エドガー・ホーネットシュレッガー(1963年オーストリア生まれ。ウィーン在住)は、経済と美術史をオーストリアとサンフランシスコの大学で学び、現在はアーティストであり、脚本家、映画監督としても活躍。アメリカ合衆国に4年、東京に10年以上在住し、イタリア、ブラジルにもたびたび暮らしています。近年は、東京とウィーンを拠点に、2004年、映像やアートプロジェクトをプロデュースするEDOKOインスティチュートを設立指揮しています。国内外の美術館、アートスペースで個展多数。1997年ドクメンタXに出品。近年は映画監督としても精力的に制作発表。2005年には愛知万博で映像作品を出品。日本を舞台にした映像作品も発表しており、1997年には『MILK』ほか、2011年には『AUN』という長編作品で世界各国のフィルムフェスティバルに参加しています。

ホーネットシュレッガーは作品において個人主義と文化的差異をテーマに、異文化への理解と共存についてのメッセージを、ドローイング、ペインティング、映像、ならびにパフォーマンスや、インスタレーション、写真など様々な手段で表現しています。社会問題にスポットをあてながらも、彼のドローイングはシンプルで親しみ易く、子供のような無邪気さがあります。
2011年の日本の震災後は、地震、原発事故、放射能汚染問題に強い危機感を持ち、『Sound Of Silence』という、一般参加型の映像プロジェクトを立ち上げ活動を続けています。

マルティン・ヴァルデ(1957年オーストリアのチロル地方インスブルック生まれ)は、ウィーン芸術大学アカデミーで学びました。国内外の美術館で個展のほか、ヴェネツィア・ビエンナーレ・アペルト’86(1986)、「シャンブル・ダミ」ゲント(1986)、イスタンブール・ビエンナーレ(1989)、ウイーン・ゼセッション個展(1996)、ドクメンタX(1997)、モントリオール・ビエンナーレ(1998)、モスクワ現代アート・ビエンナーレ(2011)など、主要な国際展に多数参加しています。1998年にはウィーン芸術賞を受賞しています。

ヴァルデはジェルや薄い膜といった触覚の不安定な素材を使って、鑑賞者が体感できるインスタレーションを数多く制作してきました。彼の視点は、ごく日常的な物事の背景に向けられ、不安や恐れ喜びなど、様々な感情の複雑な交錯にヒントを得ています。そのプレゼンテーションは不可思議でありながら、ファンタジックで軽やかでユーモアに満ちています。 はかなく頼りなげな素材が生み出す、現実と非現実の境目を行き来するような奇妙な世界感はドローイングにも強く現れています。
日本では、1999年の東京オペラシティアートギャラリー開館記念企画展『感覚の解放』、2001年、府中市美術館で「結んでほどいて」の公開制作とアーティストによるワークショップおよびレクチャーを開催しています。

ガブリエル・ストーム(1967年オーストリア東チロル地方、リエンツ生まれ)は、大学で心理学を学び、心理士として働いたのち、ウィーン芸術大学でアートを学んでいます。心理士として、様々な社会的問題を抱える一般の人々に関わったことは、彼女の制作スタイルにも表れています。

ストームは日常の中で出会ったものへの疑問をひも解き、そこに繋がる歴史をたどるために、しばしば長い旅に出かけます。そのリサーチを、カートグラフィーと呼ばれるマッピングの手法を重要なコミュニケーションツールとして、インスタレーション、コラージュ、ドローイング、写真、ペインティング、ビデオなど、様々な方法で表現しています。 今回の展示では、彼女がこの数年取り組んできたプロジェクト、『Paradise Bird』のドローイングを紹介します。ドイツ、ブレーメンの美術館でたまたま目にした極楽鳥の剥製をヒントに、羽根の装飾がもたらされた歴史をトレースするため、パプア・ニューギニアへ旅して制作したシリーズです。
そのドローイングは明るく繊細でありながら政治や歴史への視線も兼ね備え、様々な素材を無理なく繋ぎ合わせ融合させる感覚には独特の存在感があります。

三田村光土里(1964年愛知県生まれ、東京在住)は、1993年よりアーティスト活動を始め、これまで世界各地でインスタレーションを中心とした発表を重ねてきました。2005年、文化庁海外派遣芸術家としてヘルシンキに1年間滞在。2006年には、日本人としては荒木経惟以来となるゼセッション美術館での個展を開催したほか、東京都写真美術館、モスクワ現代美術館、ザルツブルグ近代美術館など国内外で開催された多数のグループショウに参加、様々な素材を用いた空間作品を発表しています。近年は、ライフワークとして滞在型アートプロジェクト「Art&Breakfast」を世界各地で開催、2011年にはモナッシュ大学美術館/メルボルン、2012年にはProject space Uqbar/ベルリンで発表しています。

三田村の作品は、「人が足を踏み入れられる三次元のドラマ」。インスタレーション作品には、日常の記憶と記録のドラマをテーマに、写真や映像、家具や小物が物語の挿絵のように配置されており、三田村自身の個人的な記憶や追憶が繊細に張り巡らされています。それらは私小説を読むように鑑賞者の記憶に呼応します。その行間に漂う気配は、気を抜けば指の間からこぼれおちる砂のように、はかない「時」を創り出しています。

6年前の秋、ゼセッション美術館で個展を開催した三田村光土里は、ウィーンを拠点に活躍するオーストリアのアーティストたち、エドガー・ホーネットシュレッガー、マルティン・ヴァルデ、ガブリエル・ストームらと交友関係が生まれました。奇しくも今年2012年はクリムト生誕150周年。本展では、ウィーンを縁につながった4名のアーティストによるドローイングを発表いたします。


全文提供:バンビナートギャラリー
会期:2012年12月19日(水)~2013年1月27日(日)
時間:12:00 - 19:00
休日:月・火 ※冬期休廊 2012年12月24日(月)~ 2013年1月11日(金)
会場:バンビナートギャラリー
最終更新 2012年 12月 19日
 

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