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第7回展覧会企画公募(受賞企画展覧会)
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 12月 05日

吉澤博之 企画「But Fresh」泉太郎《マグモド》2002、DVD 7 分

展覧会の企画を志し活動している若手への支援・育成を目的とし、展覧会企画そのものを公募するプログラム「展覧会企画公募」選出された企画はTWSが支援し、TWS本郷にて展覧会を実施する機会を得ます。
今、私たちは大きな転換期を迎え、文化芸術やアートの担い手としてのミッション、展覧会を開催する意味…これまで当然とされ省みることの無かった。
あらゆる事象を根本から再考する局面に立っています。多様性を帯び流動的なグローバル社会では、価値基準や情報への関わり方も変容し、改めてキュレーション」という行為やそれにまつわる思考が見直されています。また、芸術作品をモノとしてではなく、活動そのものやプロセスをアートとして」提示し、リアリティを追求する動きも顕著に見受けられます。
新しい表現の可能性のみならず、展覧会という表現の場をとおしていかに社会へコミットし、新たな協働の地平を開いていけるか。TWSは、これまでの展覧会」という枠組みを再考し、積極的に展覧会とはどのような場であるかをともに考え、試行していく企画を募集しました。第7回目を迎えた2012」年度は、《キュレーションとは何か?》をテーマに、3企画を選出、さらに6月に開催したキュレーション・ゼミから1企画を奨励賞として選出しました。

2012年度審査員講評

国内と海外の間の企画の質の差が気になった。概して国内の応募は、個人的な関心事から企画が立てられているものが多く、現在のアートの文脈
やそれを取り巻く社会や政治、経済に対する意識はほとんど見られなかったのは残念である。海外の応募企画は高い水準のものが多く、問題が共有
されている企画が多かったが、国内の応募とは逆にもっと固有のローカリティを意識して欲しいと感じた。その中で選出された企画は、しっかりとした問題意識とヴィジョンを持ったものである。海外応募の二人は、きわめて現在的な問題意識の中で企画が練られており、アートの現在形を示すものとして興味深い。国内の応募は、キュレーションの意図のはっきりとした野心的な試みである。特に今年設けられたゼミ選出枠の企画は、プレゼンまでの間にはっきりとした進化が見られたものだ。いずれも試行錯誤の上で最終的にどういう形になるのか今から楽しみだ。

毛利嘉孝(社会学者、東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授)


展覧会そのものよりも、トークやワークショップなど、かつては関連イヴェントと捉えられていたような要素が、展示と対等な意味を持ち始めている今日キュレーション」という言葉を、どれだけ積極的に柔軟に解釈できるかということが気になっていたが、やはりどうも、どちらかというと静的なものとして」それを捉えようという意識が強かったのかもしれない。また、海外からの応募の多くが、応募資料の文法をクリアしていたのに対して、国内からの応募の多くは、そうした教育の不足を示していたことが気にかかる。加えて、社会・政治的な問題に対しても、あきらかに国内からの応募にはその気配が希薄で、アートの内部に自閉するかのような姿勢も気になった。入選したものについても、それらの問題をパスしているというよりは、そうした問題には他の企画同様、拘泥しつつも、けれどもどこか見過ごせない要素を手にしていたという点が評価された。

杉田 敦(美術評論家、女子美術大学教授)


応募企画、特に国内の応募者に関しては企画者自身の個人的興味だけに内容が引っ張られていて、「今、どうしてこの企画なのか」という客観的な
視点が希薄だったことと、実際の社会や観客に対して展覧会を通してコミットしようとする意識の低さが気になった。入選企画は企画実現のプロセスの中での体験を通して感じたことを展覧会に反映しようとする態度がうかがえ、企画者自身が成長する可能性を感じた公募という制度の魅力が薄れているからだろうか、それとも主催者に気を使うことなくセルフプロデュースの展覧会をする方が楽だからだろうか、キュレーター志望者の応募が少ないが、キュレーターの仕事に関しては、展覧会を実際に開催してみることでしか経験値を得ることができない。会場や予算をサポートしてくれるこのような公募にキュレーター志望者からのより積極的な参加を望む。

高橋瑞木(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)


昨年度の展覧会企画公募は、3.11後、大きな転換期として、文化芸術の役割や意味を再考し、≪いま、本当に必要とされる「場」や「実験」とは何
か?≫≪公共の場で行う展覧会とはどうあるべきか?≫を改めて問う事が課題となり、選考された企画は、各々展覧会の場を拡張し、社会へコミットする事が試みられた。この事を前提に、本年は「キュレーションとは何か」を課題としたが、応募企画は、昨年以前に後退した感がある。キュレーションを既成の狭い枠内で企画されたものが多く、ダイナミックな展開は、選考された企画含めて試みられているとは言い難い。それでも海外からの応募はあるキュレーションの作法に則った企画書となっていたが、日本からの企画は、一発芸的なものが多く、今後継続するポテンシャルを受け取れず、この公募を始めて以来、解決されずに続く現状を再認識する事となった。アート作品という情報を集めるのではなく、プロジェクトそのものを立ち上げながら社会への対話と試行となる企画を待っています。

家村佳代子(TWSプログラム・ディレクター)


全文提供:トーキョーワンダーサイト本郷
会期:2012年12月1日(土)~2013年1月14日(月)
時間:11:00~19:00(最終入場は30分前まで)※開・閉館時間はやむを得ず変更される場合がございます。予めご了承ください。
休日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
会場:トーキョーワンダーサイト本郷
最終更新 2012年 12月 01日
 

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