| EN |

牡丹靖佳:片方もの、もしくは盗人のコレクション
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 11月 07日

夜の鳥 oil, pencil, gesso on canvas/80.5×61cm/2012

人や物の間に在る関係性を注意深く観察し、独自の感性とルールによって、作品世界に再構築する牡丹靖佳。アートコートギャラリーでは、2011年に続き2回目となる個展を開催します。  本展では、とある盗人のコレクション―絵画や彫刻、絵本「おうさまのおひっこし」の原画など―が収集された部屋(=ギャラリー空間)が舞台となり、狂言「吃り」の一節に謡われた「片方物」を鍵に、物語が展開されます。  絵本の世界と、絵画の世界、そして盗人のコレクションルーム――鑑賞者は三つの世界を往来しながら、モノとモノ・モノとヒトなど、自身を取り巻く様々な関係性について、新たな発見をすることでしょう。

牡丹の絵画世界では、キャンバスに一見無造作に置かれたように見える様々な色のかたまりが、観る人の視点に沿って、周囲の色や形と響き合いながら次々と新しい像を結び、別の姿へと変わってゆきます。蜂蜜色の下地に広がる紺色とちりばめられた色と形。遠くに広がる空がいつの間にか近くにやってきて、樹の幹が立ち現れる。様々な色のかたまりは鳥となって枝に留まり、歌いだすかのよう——。鑑賞者の眼差しは絵画空間の中で遠くへ近くへと漂い、謎掛けのように置かれた断片をつなぎ合わせていくことで、通常の意味や文脈を超えた自由な世界へと導かれます。

絵本の世界では、照れ屋で口下手な王様の命令をお供たちが勘違いしてしまうエピソードが、新しいお城への旅路で次々と起こります。泥で汚れたロバを見て「きれいにし てやりなさい」と命じると、ペンキで奇麗な色を塗ってしまったり、 古い小屋の雨漏りを見て「なんとかしてあげなさい」と命じると、雨の落ちる場所にずらりと食器を並べ、雨音を楽しませたり。側面から捉えられた言葉は本意から逸れつつも、魅力的で思いも寄らない思考を引き寄せ、豊かな視点を提示します。緻密で丁寧に描き込まれた原画からは、作家の思いがよりストレートに現れます。直に触れることで牡丹の巧みな仕掛けや心配りを見つけられる機会を、どうぞお見逃しなく。

[作家コメント]
それない事で候ぞ わ上郎が手具足
狐の鳴くかこんぎれ 博打打のさいめぎれ
褐や浅黄や 榛の木染に柿染
かれらこれらを取り集め 十二の品で縫ふたる片方物
(狂言「吃り」より)

*片方もの=片方の、(転じて)未完成なもの

レセプション:12月1日[土] 16:00〜18:00

全文提供:アートコートギャラリー


会期:2012年12月1日(土)~2012年12月22日(土)
時間:12:00-19:00
休日:日・月
会場:アートコートギャラリー

最終更新 2012年 12月 01日
 

関連情報


| EN |