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ignore your perspective 16「Art Builder at Work」
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 10月 26日

 

拝啓 時下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
児玉画廊|京都では10月20日(土)より11月24日(土)まで、杉本圭助、関口正浩、 田中成美、和田真由子によるグループショー ignore your perspective 16 「Art Builder at Work」を下記の通り開催する運びとなりました。本展は、彼 らが各々美術というツールで構築しつつある新しいもの、新しい概念、そのこ れまでとこれからについて考察するための試みです。
杉本圭助は、平面、立体、パフォーマンスとオールラウンドな表現をする作家 ですが、個展の際にはその多様性を一つの空間に絡み合わせるようにして構成 します。杉本の作品世界では平面上に多次元空間が表れ、インスタレーション とパフォーマンスが独特の論理で紐付けされ、何か言い知れぬ特別な理屈が働 いているように感じられます。にわかに理解されなくとも、それは端的に言え ば違和感のようなものとして観るものの思考の隅ギリギリの所にひっかかり、 それが何であるのかを知りたいという欲求を煽動します。
関口正浩は、先日のオペラシティアートギャラリー「project N」での体系的な 紹介や、児玉画廊|東京での個展「仮面」での発表における意欲的な新展開の 発表でさらにその将来的な展望を大きく広げた感がありますが、その「平面」 「絵画」 というものへの根本的な懐疑性に裏付けられた制作姿勢はより強固な ものとなりつつあります。油彩の塗膜をまるで布や紙のように扱うことによっ て、絵画の「絵具を塗る」という基本的行為を捨て去ってしまった関口の手法 は、非常にシンプルでありながら、しかし我々の視界を大きく開くような新鮮 味と可能性に溢れています。
今回初紹介となる田中成美は、建造物をモチーフに、エンカウスティック(鑞画) という技法を用いて描いています。田中は常に自らをアイデンティティの曖昧 な「visitor」であると言います。身近な、無名の建物であっても「visitor」であ る田中の目にはまるで観光地で見付けたモニュメントのように捉えられ、その 印象のままを描いています。それは単にその建物を客観的に捉える、というこ とではなく、その建物と画面を通じて対峙することによって、相対的に自分の 存在を測り、足下を地固めするための行為なのかもしれません。完成した作品 は一見淡白な描写でありながらも、鑞画によってモチーフを強固に焼き付けて いくという制作手法を敢えて取ることからは、その意識が強く感じられます。 和田真由子は「イメージを具現化する」という目的の手段として作品制作を行 っています。見た目が立体造形であれ平面作品であれ、そこに表現されている 図像イメージそのものはあくまで和田の頭の中に浮かんだ状態に準じています。 よって、立体造形的なのに平面的な性質を示していたり、平面作品でありつつ、 立体造形的な構成を有する、あるいはそのどちらともつかない中間的な様態、 といったことが起こります。和田は先日の国立国際美術館「リアル・ジャパネ スク」に続き、10月27日からは兵庫県立美術館「現代絵画のいま」へも参加 致します。
杉本や和田は、作品および世界観の構成において彼ら特有のロジックがあり、 それに基づいて全てが構築されています。関口や田中は技法とコンセプトが非 常に密接な関わりを示し、作品がなぜそのように在るのかという強い説得力を 持っています。職人が道具を駆使して美しい技を成すように、彼らもまた、各 々が新しい地平に立ち、固有の方法論によって我々が未だ見ぬ何かを今まさに 作り上げているのだという「現場」の臨場感を肌で感じて頂ければと存じます。 つきましては本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう何卒よろしくお願い 申し上げます。

敬具
2012年10月
児玉画廊 小林 健

レセプション: 10月20日午後6時より


全文提供:児玉画廊 | 京都
会期:2012年10月20日(土)~2012年11月24日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:児玉画廊 | 京都
最終更新 2012年 10月 20日
 

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