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アートの課題2012 in the AIR
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 9月 03日

ディン・Q・リー|Dinh Q. Lê《Remnants, Ruins, Civilization, and Empire》シリーズ、2012 | Photo: Gene Ogami Courtesy of Shoshana Wayne Gallery

「もっといいところを探したって、すぐにどこも一緒だとわかるさ。パラダイスだって思ったところもそうじゃない。・・・あなたの生き方を変えることが難しいのはわかってる。・・・・もしあなたが最初の一歩を踏み出すなら、すぐに終わりが来るわけじゃないってわかるよ。・・・僕らはいま一体どこに立っているんだろう?」(CHICAGO /“Where do we go from here?”)

1960年代後半、政治的な曲を多く歌っていたロックバンドCHICAGOによるこの曲のタイトルは、69年の、人類初の月面着陸の際の実況中継TVレポーターの言葉からとられています。月面着陸を支えた進歩思想と同時に存在した62年のキューバ危機に始まり、ベトナム戦争に至る大きな闇。若い世代はこれまでとは違う、新たな世界を模索していました。昨年の東日本大震災という未曽有の大災害の後、これからどこへ向かうべきかを考えていたとき、この昔の歌が聞こえてきました。

私たちはこの一年半の間に、向かうべき目的地をはっきり見据えることができたでしょうか?残念ながら、まだ先の見えない状況が続いていると言っていいでしょう。しかし、一つだけ以前と明らかに違うことがあります。それは「まなざし」です。私たちはどこへ行くのかに対する答えはありません。しかし、それを問い続ける態度とまなざしにこそ答えがあります。

アーティスト・イン・レジデンスはアーティストが単にどこかに滞在したり、海外に出かけたりすることではありません。ひと時、自らの文脈から離れ、世界を凝視する機会、そのまなざしこそが、アーティスト・イン・レジデンスと呼ばれる機会です。in the air、まるで空に漂うように、そしてだからこそ見えてくる世界があります。

僕らはいま一体どこに立っているんだろう?」をテーマに掲げた、昨年の「アートの課題2011」では、レジデンス滞在を通してレクチャーやワークショップを行い」ました。この問いについてともに考えたアーティストたちが新作とともに帰ってきます。

[作家プロフィール]
チャン・ヨンヘ重工業(韓国 / アメリカ)
韓国出身のヨンヘ・チャンと、米国出身のマーク・ヴォージュによるユニット(yhchang.com)。ソウルを拠点に活動。人間がもつ普遍的な心理、葛藤を浮かび上がらせ、ユーモアに皮肉を利かせたテキストアニメーションに、自作の音楽を合わせた作品はのべ20ヶ国語を数え、テート美術館(ロンドン)、ポンピドゥー美術館(パリ)、ホイットニー美術館、ニューミュージアム(NY)など、世界的に著名な美術館で発表。ヨンヘとマークは2012年ロックフェラー財団べラジオセンター・クリエイティブ・アーツ・フェローの一員。

ディン・Q・リー(ベトナム)
1968年ベトナム・ハティエン生まれ、ホーチミン市在住。1978年、クメール・ルージュが故郷の町に侵攻した際、家族でタイに避難し、1979年アメリカに移住。カリフォルニア大学サンタバーバラ校にて芸術の学士号を取得後、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツにてMFAを取得。リーは、写真・立体作品、ビデオ作品を通して、戦争や移民の問題に取り組んでいる。2010年、MoMA(NY)にて個展開催。また、2012年、ドクメンタ(13)へ参加。ロサンゼルスを拠点とするベトナム芸術財団(VNFA)およびホーチミン市の非営利ギャラリーのサン・アートを共同設立。

ウィット・ピムカンチャナポン(タイ)
1976年タイ・バンコク生まれ。1999年、イギリス・ケント・インスティテュート・オブ・アート&デザイン、メイドストーン、ヴィジュアル・コミュニケーション修士取得。コンテンポラリー・メディア・スタディに対する長年の興味から、都市、音波、構造体や空想といった空間的なオブジェクトや、風景的な形式を作品に取り入れる。アーティストとして、紙や果物、また他者が手を加えられるような日用品を用いることの可能性から刺激を受け、強いインパクトを持つ、インタラクティブな作品を手掛ける。近年の主なグループ展にシンガポール・ビエンナーレ(2008)、第6回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(ブリスベン、2009)など。また、「Soi Project」の主要メンバーとしても活躍している。

■関連プログラム■
アーティスト・トーク
日時:10月31日(水)19:00-
出演(予定):チャン・ヨンヘ重工業、ディン・Q・リー、ウィット・ピムカンチャナポン、ワシフ・コルトゥン(SALT Research & Programs ディレクター)、ディビット・エリオット(第1回キエフ・インターナショナルビエンナーレ、アーティスティック・ディレクター)
会場:トーキョーワンダーサイト本郷

滞在制作
モハメド・アブデルカリム(エジプト)
ヌール・アブアラフェ(パレスチナ)
滞在期間:9月初旬~11月下旬
オープンスタジオ:10月26日(金)―28日(日) 13:00 -18:00 (予定)
会場:トーキョーワンダーサイト青山:クリエーター・イン・レジデンス

アートの課題2012プログラムの一環として、中東より若手アーティストを招聘します。トーキョーワンダーサイト青山:クリエーター・イン・レジデンスを拠点に滞在制作を行い、リサーチや制作のプロセスをOPEN STUDIOにて公開いたします。また、本滞在中に制作された作品は来年度トーキョーワンダーサイトにて発表予定です。

パートナー機関:アシュカル・アルワン・レバノン現代芸術協会(レバノン)

全文提供:トーキョーワンダーサイト本郷


会期:2012年9月21日(金)~2012年11月25日(日)
時間:11:00 - 19:00
休日:9/25、10/1・9・15・22・29、11/5・12・19
会場:トーキョーワンダーサイト本郷

最終更新 2012年 9月 21日
 

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