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Arisa Odawara : a Tokyo suburb 2012
Events
Published: August 17 2012

Arisa Odawara
a Tokyo suburb 2012

Arisa Odawara
I took the usual road home. 2011 acrylic on canvas 410×530mm

Arisa Odawara
#153 2012 watercolor on paper 210×297mm

終わりのない人形劇

2005年、若手の発掘イベント「GEISAI」で、初めて小田原亜梨沙の作品を見た。レトロな服装のぽっちゃりした女性が、二人ないしはそれ以上、反復して描かれた不思議なドローイング。カラフルに塗られた服の柄が目をひき、そのフラットで軽妙なグラフィック感覚と、黒目のない人物達の虚無感が妙に印象に残ったのだった。 水彩を中心に、鉛筆やペンも使って描かれる彼女のドローイングは、その後も創作の基盤になっていったようだ。勢いのある線やタッチが装飾的に画面を彩り、相変わらず不可解な女性や男性像を中心に、スイーツやコスメ、牧歌的な風景が、連想ゲームのように画面に登場した。青木陵子やスーザン・チャンチオロといった、ドローイングを重視する同時代のアーティストとも、うっすらどこかで繋がっていた。
そんな彼女の作品が変化したのは、「my fictitious diary」という空想日記を描き始めた、2008年頃からだった。複数の男女が家の中やリゾートで繰り広げる、ちょっと意味深な人間模様。一枚のドローイングとしばしば英語のコメントで表されるその日記は、題名を知らなければ、他人の日常をのぞき見する好奇心で興奮が倍増しただろう。けれど、海外のメロドラマを思わせるステレオタイプな雰囲気と、女性の背後に骸骨がいたりする突拍子のなさに、これが想像の物語だということが明らかになる。そして、観客の別の想像力に火が付けられる。 三日に一度は描き、すでに十冊近くにもなった空想日記には、実は50ものエピソードが平行して起きているのだという。小田原は、そうして日々、ゲームのように物語を膨らませていくことで、絵を描くことが自然に続けられると、打ち明ける。中には、細部を変えて繰り返し描かれる場面もあり、それがキャンバス画などに転じるケースも増えてきた。マネキンのように戯画化された世界が、絵画の中では抽象化され、別の意味を帯びて見えることが興味深い。
幼い頃、息を潜めて大人達の様子を伺い、その成り行きをこっそり空想していた小田原は、人形遊びのように自分の世界を絵の中に描き表してきたという。その後、独学で試行錯誤した彼女の想像世界は、木々が枝葉を広げるように、つぎつぎと作品として展開し始めた。今回の展覧会では、地上と地中が舞台になるらしい。あの奇妙な人々が、今度はどんな風に活躍するのか、今から楽しみだ。

宮村周子 Miyamura Noriko (編集者、ライター)


今展では、「a Tokyo suburb」と題されたドローイングと、その連作として板に描かれる作品、さらに絵の中に登場する生物やその様子をクローズアップした粘土作品など、計約10点を展示予定です。

初日9月8日(土)18時からはオープニングレセプションを行います。作家も在廊いたします。 ぜひ皆様、ギャラリーにお立ち寄りいただき、作家とも直接お話しいただけましたら幸いです。

つきましては、展覧会情報など、ご紹介いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。 作品画像データなどをご希望の方、またはご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。

fabre8710 南口俊樹

[作家プロフィール]
小田原亜梨沙 Arisa Odawara

1979
東京都生まれ

個展

2012
「くうそうえにっきてん」 dessin、東京
「Sally Scott 10th Anniversary fair / live drawing & exhibition」 サリー・スコット 表参道店、東京
2009
「ロイヤル ホリディ」 yuyujin、東京
2006
「Arisa Odawara」yuyujin、東京

主なグループ展

2012
「1_WALL #6」 ガーディアン・ガーデン、東京
2011
「ワンダーシード」 トーキョーワンダーサイト渋谷、東京
2010
「TIS #8」 ギャラリー5610、東京
2009
「トーキョーワンダーウォール」 東京都現代美術館、東京
2008
「Arisa Odawara + sullen」sh site、ニューヨーク
2006
「rock in rucksuck」 東京藝術大学 多目的ラウンジ、東京

受賞

2012
1_WALL #6 ファイナリスト
2011
ワンダーシード 入選
2010
TIS #8 入選
2009
東京ワンダーウォール 入選


主な参考文献
作品集
2012
『Arisa Odawara my fictitious diary』 edition of 30, zine

定期刊行物
2012
『ニクキュー #09』 サリー・スコット
2010
『ku:nel vol.45』 マガジンハウス

Reception Party:2012/08/10(Fri) 18:00~


全文提供:fabre8710
会期:2012.9.8~2012.11.24
時間:12:00~19:00 open only on Fri,Sat

会場:fabre8710
Last Updated on September 08 2012
 

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