| EN |

宮本隆司:薄明のなかで見よ
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 8月 16日

(c) Ryuji Miyamoto Courtesy of TARO NASU

宮本隆司は1947年東京生まれ。現在、東京にて制作活動。 1973年多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。1989年第14回木村伊兵衛写真賞受賞。1996年第6回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展にて金獅子賞受賞。2005年第55回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。 主な作品集に『KOBE 1995: The Earthquake Revisited』(ベアリン)、『新・建築の黙示録』(平凡社)、『九龍城砦 Kowloon Walled City』(平凡社)、『CARDBOARD HOUSES』(ベアリン)など。国内外の個展、グループ展に多数参加。また、東京国立近代美術館(東京)、国立国際美術館(大阪)、サンフランシスコ近代美術館(アメリカ)、フランクフルト近代美術館(ドイツ)、ハンブルク美術館(ドイツ)など国内外多数の美術館に作品収蔵。

宮本は1990年代より「ピンホールの家」シリーズを展開してきました。大型のピンホール・カメラをダンボールで組み立て、宮本自身がカメラの内部に入り込み撮影を行うその独特のスタイルは、ホームレスが居住するダンボール・ハウスに着目した「CARDBOARD HOUSES」シリーズより派生しています。その後ピンホール作品は宮本の活動を語る上でも重要なキーワードの一つとなっています。 本個展ではスイスから提供されたピンホール・カメラで撮影した新作約30点を展示の予定です。

[作家コメント]
<柔らかくていいかげんで曖昧な>

ある日スイスからピンホール・カメラが送られてきた。送られてくるまでの経緯は省くが、ピンホール・カメラ制作家とでもいうような人から提供されたものである。送られてきたカメラは厚紙を材料にして作った素朴な手作りカメラであった。6x17cmサイズのブローニー・フィルムを使用して、ほぼ120度の画角を捉えるパノラマ・カメラである。

ピンホール・カメラでの撮影にはピントを合わせるという操作が無い。あらかじめ全てに柔らかくピントが合っているためである。フレームを切り取るというような操作も無い。ファインダーが存在しないから、いいかげんに画面を設定することしか出来ないのだ。さらに露光時間が長い、そのために動くものを写すのがむずかしい。撮影にえらく時間と手間がかかり、ほとんど何の役にも立たない時代錯誤な代物である。

この無い無いづくしのピンホール・カメラが写し出すのは、不鮮明でつかみどころのない不確かな世界である。だが、ピンホールを通過した柔らかくていいかげんで曖昧に見える写真は、レンズ、フォーカス、フレーム、シャッター・スピードなどカメラの基本的な機能を極限まで取り去った果てに、それでもなお見えてくる世界の光景なのである。


宮本隆司

*Reception for the Artist: 2012年9月28日(金)18:00 - 20:00

全文提供:TARO NASU


会期:2012年9月28日(金)~2012年10月27日(土)
時間:11:00-19:00
休日:日・月・祝
会場:TARO NASU

最終更新 2012年 9月 28日
 

関連情報


| EN |