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秋山祐徳太子:ラッキー7
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2012年 7月 25日

画像提供: AISHO MIURA ARTS

「ブリキ彫刻」というキッチュな彫刻を生み出し続け、70年代には「政治のポップアート化」を目指して都知事選に2度も出馬した秋山祐徳太子による個展である。

選挙への出馬というと、思想的な活動家か目立ちたがりやか、などと思われてしまうかも知れない。しかし、作家の言動や著作からは、同じ素材でずっと作品を生み続ける真摯さと、状況や出会った人との縁に乗じて、恥ずかしがりながらも面白いことをやるという粋な性格が窺われ、いやらしさが無い作家の姿が見えてくる。そんな作家による個展なのだ。

本展は、ブリキ彫刻と、選挙活動関連の作品とで構成されている。長年、男爵像をモチーフにしてきたブリキ彫刻シリーズでは、今回、新たに招き猫を制作。招き猫のカラッとした存在感は、媚びない可愛らしさとともに親しみがわく風情を醸し出し、粋なポップを体現している。本展では、新作だけでなく、1988年の男爵像モチーフの《遠方の皇帝》から、新作の《ブリキ招き猫》まで、ブリキ彫刻の遍歴も見られる展示となっていて興味深い。

また、1979年の二度目の都知事選時のポスターとともに、政見放送を模した新作の映像作品《元東京都知事候補 秋山祐徳太子》も発表。少し酔った作家本人が、時に歌い、時に今について語っている様子は、可笑しみとともに、作家の人生の含蓄をも感じさせる。長年作品を作り続けてきた作家の、愛すべき展覧会だ。

最終更新 2015年 10月 31日
 

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