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佐藤雅晴:ピンクのサイ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 5月 09日

≪Hands≫2009年 | 技法・材料:ラムダプリント、アクリルマウント | サイズ:70×46.2cm、Ed.3 | copyright(c) Masaharu SATO

佐藤雅晴は1973年大分県に生まれました。1996年東京芸術大学美術学部油画学科を卒業し、1999年同大学院修士課程を修了しました。2000年にドイツに渡り、現在デュッセルドルフを拠点に活動しています。ドイツでの新しい生活環境の下、頻繁に不思議な夢を見た事を契機に、夢で見たものをモチーフにペインティングを描き始めました。そして、流動的な夢の世界をビジュアル化するための模索を続ける中、独学でアニメーション制作にとりかかりました。

2004年から2007年の4年間を費やし制作されたアニメーション作品「TRAUM」は、ドイツ語で夢という意味で、まさにドイツに住み始めてから見た夢を基に、佐藤の世界観が凝縮された映像詩として生み出されました。

また、この度の第12回岡本太郎現代芸術賞で特別賞を受賞した「アバター11」と題された新作のアニメーション作品は、11台のディスプレイに映し出された佐藤の知人11名が、横を向いた状態から正面に振り向き、観賞者に対して視線を交わしながらその行為を繰り返すという映像作品です。観賞者にとっては見ず知らずの他人でありながら、視線が交わされると心的距離が極度に接近するような、目眩にも似た錯覚を生じさせる作品となっています。 実写からトレースされ、切り取られた現実世界をデジタル手法で記号化し、観る者に匿名性の情景を映し出す佐藤の作品は、日本国内外に発表の場を広げる中、益々注目が集まっています。

佐藤雅晴の日本での初個展となる本展は「ピンクのサイ」と題され、約10点の新作平面作品が展示されます。路上に捨てられたカツラ、監視カメラにとまる蝶、街灯に照らされる透明人間、ホテルのロビーに裸で重なり合う男女など、ありふれた光景に射し込む淡い狂気は、きっと、観る者にパラレルワールドへといざなう扉を開いてみせることでしょう。従来の絵画手法とはまったく異なるアプローチで描かれた佐藤の「絵画空間」を、是非ご体感ください。

あの片足の娼婦はピンクのセーターを着て
いつもあの場所に立っている。
そして、あたかも当然の出来事のように
徐行していた一台の車が彼女の前に止まり
彼女を乗せ過ぎ去って行く。
今のいままで彼女が立っていたいつもの場所には、
からっぽになったままの溜め息だけが
ぽつんと残っていた。

(佐藤雅晴)

※全文提供: Gallery Jin Projects

最終更新 2009年 5月 09日
 

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