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ジョージェ・オズボルト 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 5月 06日

© Djordje Ozbolt 2008 | Courtesy of TARO NASU "Buddha’s Last Meal" (2008) | acrylic on board 85.0x75.0 cm copy right(c) Djordje Ozbolt

1967年旧ユーゴスラビア社会主義連邦共和国に生まれる。University of Belgrade(セルビア)にて建築を学んだ後、NYに移り、さらにロンドンに移住。2000年にSlade School of Fine Art(ロンドン)にて学士号取得、2006年Royal Academy of Art(ロンドン)にて修士号取得。

ジョージェ・オズボルトはアーティストとしてのキャリアをスタートさせるやいなや、欧米のコレクターの熱い注目を集めるようになった。小型のキャンバスに、ときに精緻にときに荒々しく、多彩な筆致を駆使して描かれる彼の絵画はしばしば「ダーク・ロマンティシズム」と評されている。文明の光と陰をクールな眼差しで描き出すその作風は、ユーゴスラビア崩壊を体験した故国喪失者としてのオズボルト自身のアイデンティティによるところも大きい。

一見すると奔放な想像力に身を委ねたかのような作風が特徴的ではあるが、その実、オズボルトの作品世界は美術史的引用と擬態を重ねて丹念に織りなされた重厚な知的創造物である。その引用の範囲は広く、ヴァールブルグやパノフスキーに代表されるような図像学的な引用にとどまらず、ヒンドゥー教図像などのキリスト教以外の宗教絵画や、民俗伝承、グラフィティ的表現、ポップカルチャーなど多岐にわたっている。何重にもはりめぐらされた意味の重層性は過去にのみ言及されるものではない。

オズボルトの作品は常に現代的な視点をも併せもっている。時折描かれる暴力的、政治的なモチーフやウィットに富んだ表現はその端的なあらわれといえよう。その一方で自らジョルジュ・デ・キリコを最も尊敬する作家として挙げていることからもわかるように、オズボルトのシュールレアリスムへの傾倒は、安易な物語的要素や解釈の可能性を排除する。イメージの生み出す豊穣さとは対照的なその寡黙さと禁欲性とが彼の作品に強烈な印象を与えている。優雅さと荒々しさ、憂鬱や皮肉などのネガティブな感情をきわめて魅力的に描き出す表現力、いわゆるハイ&ローの要素の混在。これらの矛盾はオズボルトの目指すところであり、その混沌のなかにこそ彼の思い描く絵画の未来が存在している。

TARO NASUでの2年ぶり2回目の個展となる今回は、新作の絵画14点に加えて、日本では初めての発表となるコラージュ作品5点も展示する予定である。

※全文提供: TARO NASU

最終更新 2009年 5月 22日
 

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