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重野克明:Melancholy
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 4月 25日

重野克明「旅館」 2011 | 40 x 31cm | 絹本着彩

昨年Showcaseで発表した「ローズワールド・色付」では、淡い水墨画や文人画のような水彩の表現で、手に入らないものへの憧憬を描きました。モノトーンより少し明るい色調で彩られた作品は、追い求めることで芽生える希望と幸福の儚さを映し出しました。 およそ一年ぶりとなる今展では、色彩が排除され、濃い霧のようにぼんやりと深い闇の中で、孤高の美感によって生かされている者の姿を描いた作品を発表いたします。戦後の圧倒的な貧しさの中で不遇の生活を送りながらも、日常の言葉を紡ぎ続けた歌人石川啄木を評し、重野は憧れにすらすがることのない、より孤独で愚直な生の営みの在り方を探ります。 『悲しい歌やメランコリックな絵画で日常の生活の力を得る人間は平和に慣れてしまった人ではないか。私はそれを好む。自分のためにそのような絵を描き、慰め、それを他人に押し付けてしまう。表す素材によってその趣は変わるが、より映像的な表現を求めた結果、絹地に墨を選択した。少し古い記憶の場面を濾過して掬い取り、煮こごりのようになったときに、作品が生まれる。』   絹本に滲んだ墨の濃淡で描かれた作品は、壁に浮かんだしみのように不可思議で古めかしく、過去の記憶が同化するようなどこか懐かしい錯覚をおこします。ノスタルジックなベールに包まれて、薄暗い世界に立ち尽くし、横たわる人物達は、それでも存在するために戦いながら生きる者の、透徹とした美しさを放ちます。 作家としての信念を持つ事が難しい社会の中で、重野は果敢に筆をとり、存在することと美の関係を問い続けます。重野克明の「Melancholy」をどうぞご期待下さい。

レセプション: 6月12日(水) 17:30 - 19:30

全文提供:Showcase


会期:2012年6月12日(火)~2012年6月30日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:Showcase

最終更新 2012年 6月 12日
 

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