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ストリート・ライフ  ヨーロッパを見つめた7人の写真家たち
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Published: February 03 2012
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トーマス・アナン「グラスゴーの古い小路と街路」より | 1868-77年

本展では、当館で2004年に開催した「明日を夢見て~アメリカ社会を動かしたソーシャル・ドキュメンタリー」展のヨーロッパ版となる展覧会として、イギリス、ドイツ、フランスで19世紀後半から20世紀前半に展開したソーシャル・ドキュメンタリー写真に焦点をあてます。
ヨーロッパでも社会改良の手段としての写真は見られましたが、国家プロジェクトのキャンペーンなどによって、ソーシャル・ドキュメンタリー写真が有効に機能したアメリカとは異なる展開を見せました。ヨーロッパでは近代化に伴い急速な変化を遂げる都市のすがたを記録として残そうと、消えゆく街角や生活風景などが記録されました。そうした都市風景の記録写真は、失われていく歴史を後世に伝えるために写し留めています。
当時の時代背景や地域性に目を向けながら、記録精神が紡ぎ出したヨーロッパのソーシャル・ドキュメンタリー写真の優れた感性や創造力を、この分野のパイオニアであるトーマス・アナン、ジョン・トムソン、ビル・ブラント、ブラッサイ、ウジェーヌ・アジェ、アウグスト・ザンダー、ハインリッヒ・ツィレの7人の写真家たちの作品から見ようとするものです。
(出品点数 183点)

[作家プロフィール]
ビル・ブラント(1904-1983)
ドイツ生まれ。マン・レイ の助手をつとめたことによるシュルレアリスムの影響から、独自の表現スタイルが特徴的なヌードやポートレイト写真などが有名だが、1930年代には、イギリス人の社会生活を記録して『イングリッシュ・アット・ホーム』として発表する。

アウグスト・ザンダー(1876-1964)
ドイツ生まれ。あらゆる階級や職業のドイツ人を記録し、社会構造を見ようとする壮大なプロジェクトを手がけ、その一部を1929年に発行された『時代の顔』として刊行する。36年、ナチスに押収されるが、幸運にも消失を免れたネガからのプリントと撮影が戦後も続けられた。

トーマス・アナン(1829-1887)
イギリス生まれ。1868年、グラスゴー市からの委託により、再開発計画の一環として壊される前の建築物や街頭の風景を記録する。そのなかで捉えられた貧しい居住者たちのすがたは、ジェイコブ・A.リースのニューヨーク、スラム街のドキュメンタリーとの類似性を見出すことができる。

ジョン・トムソン(1837-1921)
イギリス生まれ。1860年代から70年代前半にアジアを旅し、その異文化を記録する。イギリスでの国民生活の様々な問題が社会問題として認識されはじめた70年代中頃には、ロンドン市民の暮らしを撮影し『ストリート・ライフ・イン・ロンドン』としてまとめた。社会改良のドキュメンタリーの先駆けとなる。

ハインリッヒ・ツィレ(1858-1929)
ドイツ生まれ。ワイマール政権下の市民生活を風刺したリトグラフなどが高く評価される。写真を始めたのは1880年代末頃で、画家としての主題を、都市の社会条件に向け始めた時期と重なる。作品には社会の弱者たちに対する優しい視線が流れている。

ブラッサイ(1899-1984)
ハンガリー生まれ。1932年に『夜のパリ』として発表された写真集は後世の写真家たちに多大な影響を与える。マグネシウム・フラッシュを多用して魅力的なパリの生活の光と闇を捉えた。ビル・ブラントは、このシリーズに触発され「ナイト・イン・ロンドン」を制作している。

ウジェーヌ・アジェ(1857-1927)
フランス生まれ。19世紀末の消えゆくパリの街並みや人々の暮らし、建築物の内部の装飾の詳細部分などを撮影し、画家たちのための資料として販売する。これら生計のために記録した約8000枚の写真は、晩年、マン・レイに認められ、ベレニス・アボットによって世に広められた。

全文提供:東京都写真美術館


会期:2011年12月10日(土)~2012年1月29日(日)
休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)
会場:東京都写真美術館

Last Updated on December 10 2011
 

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