編集部ノート
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執筆: 田中 みずき
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公開日: 2011年 12月 21日 |
若い年代にこそ観て欲しい展覧会。この作家の作品は、パワフルで、切なくて、理知的だ。画家の名は、野見山暁治。長年東京芸術大学の教職に就き、画業のみならず文筆活動においてもつとに知られる画家である。 本展は、そんな野見山の画業の全貌を伝えるものだ。まず並ぶのが、若い頃の西洋の画家の作風を学んでいた時期の作品、戦争体験を反映させた作品、そして身近な廃鉱を描いた作品。その後、フランスに渡り抽象化や色彩の変化を遂げた作品や東洋絵画へ目を向けるようになった後の作品、さらには今年の東日本大震災をきっかけとして描かれた作品。画家の人生の流れに沿って作品を並べた本展からは、野見山が作品制作といかに向き合い、どのように作品を純化させてきたのか、手に取るように分かる。 渡仏以降は抽象化が進み、さらに近年では、抽象画でありながら、「いたずらな部屋」「見たような景色」「これだけの一日」「いつかは会える」「誰にも言うな」といったタイトルともに、油彩画なら筆致の勢いや、余白の間、塗りこめた平坦さなどが絶妙に組み合わさる画面、版画なら色彩や構成で生み出される世界を観ていると、具象よりも鮮明に描かれているものが伝わってくる点が圧巻である。 展覧会会場では、椅子に腰かけてじっと絵を眺め続ける観客が数多く見受けられた。作品に向き合い、まっすぐ見つめてみるべき展覧会だろう。
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最終更新 2011年 12月 22日 |