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米田知子「Japanese House」
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2011年 11月 19日

蒋介石政権 時代の参謀 総長であった王叔銘将軍の家 I、
齊東街・ 台北
Former house of General Wang Shu-ming, the Chief of Staff under Chiang Kai-Shek, Cidong Street, I
2010, C-Type Print, 65x83cm, ed.10
画像提供:シュウゴアーツ
Copyright © Tomoko YONEDA

   本展覧会に付けられたタイトルを観て、台湾で撮られた写真を展示しているのに「Japanese House」であることに違和感を覚えてはいけない。撮影されたのは、日本統治時代に撮影された日本式家屋である。政治に関わった人物が住んでいた家を選び、一見ではわからない歴史や記憶を持った場所を撮り続けている米田の作風が生かされている。
   現在も使われている部屋もあれば、廃墟と化した部屋もある。日本家屋風でありながら、壁紙は欧米風の模様に替えられていたり、アイドルの古びたポスターが貼られていたりといった部屋の様子も面白い。こういったわかりやすい文化や時代の推移とともに、幾何学的な建築構造の中、部屋の奥の壁に正面から向き合う構図で撮影された写真の中での、剥がれ落ちそうな天井の板やめくれあがったポスターの隅などが興味深い。規律からはがれそうなものを鮮やかに浮かび上がらせる画面が鮮烈に印象に残る。
   タイトルを観て、誰が住んでいたかを知ると、また考えさせられるものがあるだろう。写真に写し込まれるのは現在だが、背景にある過去の時間をも意識させる作品、じっくりと鑑賞したい。

最終更新 2011年 11月 27日
 

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