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写真家・石内都さん、海外で初の「ひろしま」個展開催
ニュース
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 10月 18日

Copyright© Miyako Ishiuchi
画像提供:The Third Gallery Aya

写真家・石内都さんが、10月14日からカナダのヴァンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学人類学博物館ギャラリーにおいて、海外で初の「ひろしま」シリーズを展覧する個展『ひろしま/hiroshima by Ishiuchi Miyako』を開催している。2011年の新作を含めて48点の写真作品、映像作品《ひろしま strings of Time》が展示される。会期は、2012年2月12日まで。
石内都さんの「ひろしま」は、1945年8月6日に広島市に投下された原子爆弾によって命を失った被爆者たちが身に着けていた衣服や持ち物などの被爆資料を、ライトボックスに置き撮影した写真。2007年には写真集『ひろしま』が刊行されている。国内の展覧会は東京、広島、長野、大阪、沖縄、宮崎などで開催されている。

■展覧会概要
「ひろしま / hiroshima by Ishiuchi Miyako」
Museum of Anthropology of University of British Columbia
http://www.moa.ubc.ca/exhibits/
2011/10/14(金)‐2012/2/12(日)

「ひろしま(hiroshima) 2011 in バンクーバー」石内都

夏の朝、突然現れた火球が発した放射線を浴びたモノと、その為に亡く なった人々の遺品は、その過激なディティルの陰りの中に浮きあがる鮮明な色彩のテクスチャーに思わず、息をのむ。原爆資料というにはあまりに 日常的で生活の営みそのものだ。
私が眼にした広島は、反戦、平和の図式から取り残された、もしくは隠蔽 されていた無名の女性が身にまとっていたワンピースのシルエットであり、スカートに深く刻まれたギャザーであり、絹糸で織られた布地に遺され ていた、日常のささやかな肌ざわりであった。
その記憶をつなぎ止めるように、毎年新しい遺品が広島平和記念資料館へ 届けられる。何らかの理由で寄贈されるそれらの遺品は、私物が公的に変化する瞬間である。
その現場に立ち合うようにして年に一度、個人的に撮影をはじめて、3年 が経とうとしている。
今年も広島へ。しかし今年は少し様子が違っていた。それは大震災、そし て大きな意味で第3の被バクといえる原発事故が起きてからという事だ。
66年の時間を越えてなお今も在りつづけている確かな形見は、世界最大 級の人類の傷跡であることを改めて物語る。戦争と科学との実験の場にされた土地にのこるモノは過去になることが出来ない。私はその遺品と共有 した空気にピントを合わせ、その場の時間をたぐり寄せながら写真を撮るだけだ。「ひろしま(hiroshima)」をまだ見ぬ人に向けて。

■石内都略歴
群馬県生まれ、横須賀育ち。初期三部作「絶唱、横須賀ストーリー」「APARTMENT」「連夜の街」で街の空気、気配、記憶を捉え、同い歳生まれの女性の手と足をクローズアップした「1・9・4・7」以後身体にのこる傷跡シリーズを撮り続ける。'79年第4回木村伊兵衛賞。'99年 第15回東川賞国内作家賞、第11回写真の会賞、'06年日本写真協会賞作家賞 受賞。
'05年「Mother's 2000-2005 未来の刻印」でヴェネチア・ビエンナーレ日本代表。'09年写真集「ひろしま」(集英社)、写真展「ひろしま  Stringsof time」(広島市現代美術館)により第50回毎日芸術賞受賞。第3回国際写真センター・トリエンナーレ(N.Y)招待作家。
「ひろしま」は沖縄、東京、大阪にて個展。2011年、宮崎、長野、ヴァンクーバーで個展を開催。

最終更新 2011年 10月 18日
 

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