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世界制作の方法
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 9月 14日

パラモデル《paramodelic – graffiti》2009 ©paramodel | Courtesy National Taiwan Museum of Fine Arts Photo paramodel

今回、出品する作家たちは、美術作品が絵画や彫刻といった枠組みから大きく踏み出し、他領域への侵犯を遂げてきた歴史的事実を前提として、先行世代が為し得なかった課題を自然な形で克服し、自らの存在を主張する。例えば、近年の情報技術の発展に伴った新しいメディアの使用に対して、そのメディアの特性が目立たなくなる程に表現を先鋭化し、表現ツールの一つとして自由闊達に用いる。あるいは、彼らは、インスタレーションといわれる展示空間全体を表現の場とする方法論が、場所性という外的要因に囚われて表現が硬直化していった状況に対して、表現することの根源的な地点まで立ち戻り、展示空間を自らの表現を確立する場として捉え直し、その方法論を再解釈するのである。

次に、それぞれの出品作家の特性を確認しよう。エキソニモは、ハッカーとしての才能によってウェブ空間上にもう一つの世界を体現する。クワクボリョウタは、鉄道模型を手段として用い、メディアアートのインタラクティヴな性格を見る者の中に見出す方法を考える。それぞれ、新旧のメディアを舞台に縦横無尽に活動する。また、伊藤存と青木陵子は、美術の本流として扱われてこなかった刺繍やドローイングによって自由な連想を展開する。2人は、その自由なイメージをアニメーションの中で交差させる。さらに、展示空間全体を用いる表現様式を再解釈するのは、パラモデルの、プラレール等を媒介とした制作工程を見せる完成型を求めない表現であり、大西康明の日常的な素材を利用した奔放自在な形態を生成させる手法である。さらに、限定された空間を、やはり日常的な事物のイメージや身振りの連鎖によって伸縮させるのは金氏徹平の作品であり、鬼頭健吾は、それら日用品による様々な仕掛けによって異化作用を誘引し異空間を生み出す。彼らは、空間を物理的な限定要因として捉えることがない。あるいは、木藤純子は光や風といった自然現象を予感させる装置としての空間を創出し、人々の情緒的な感受性を導き出す。また、人々が社会の中で陶冶され続ける隠蔽された共通理念を、通奏低音のように観る者に響かせるのが半田真規の作品なのである。

本展のタイトルは、20世紀アメリカの哲学者ネルソン・グッドマンの著書『世界制作の方法』に由来している。同書の中でグッドマンは、記号論的方法によって世界の多数性を論じている。「世界そのもの」はいかなるヴァージョンにも所属せず、その実体は存在しないと述べ、「世界」はあくまで制作されるものであり、それはいくつものヴァージョンを作ることである、と展開する。世界の複数性を論じたグッドマンの記号論的観点は、今回の展覧会を構成する作家たちの作品を読み解くために示唆を与えるところが大きいだろう。以上の様に、国内外で活躍する6人と3組の日本人作家がつくり出す様々な手法による先鋭的な作品群を通じて、「世界制作の方法」が見る者の前に立ち現れることを確信するものである。

出品作家
エキソニモ、パラモデル、伊藤存+青木陵子、クワクボリョウタ、木藤純子、鬼頭健吾、金氏徹平、半田真規、大西康明

全文提供: 国立国際美術館


会期: 2011年10月4日(火)~2011年12月11日(日)
会場: 国立国際美術館

最終更新 2011年 10月 04日
 

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