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熊谷誠:回想する家
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 9月 14日

《ノートブック #18》2011年 | 145 x 110 x 40 mm | 画像提供:ギャラリーヤマグチ クンストバウ | Copyright© Makoto Kumagai

熊谷誠(b.1968ー)は、これまでシンプルな線描によって風景を版画や油彩によって描いてきました。 2008年の個展「日の出」では、地平線から昇る太陽を大きなキャンパスに描いています。 熊谷の選ぶモチーフ、そして描く抽象化した風景は、普遍的で雄大な世界を感じさせるものです。

約3年ぶりとなる本展では、家のかたちをモチーフに、大型のキャンバスに油彩(2点予定)の作品の他、版画など数点を展示する予定です。

注目すべきは、熊谷の新しい取り組みである銅板を使ってノート型の立体作品を15点ほど展示致します。 今回のモチーフとなる家、ノートブック、これらは熊谷の身近かに実存するものが元になっていると言います。 我々の日常の中に潜む美しきものを再度気づかせてくれることでしょう。

「回想する家」
二年前、今は物置として使っている古い木造家屋から、埃を被った大学ノートが数冊見つかりました。ページの間には大小様々な紙片が挟み込まれ膨れ上がり、シミや黄ばみが浮かびあがっていました。
ノートは、実家の家業でありました農業の年間耕作記録がびっしりと書き込まれており、いわば農耕日誌なのですが、あいまに短く家族のことも記録されていました。「1月23日 小学校参観日」、「7月3日 保育園七夕まつり」、私と兄のことがよくでてきます。
一年のなかで季節の作物が移り変わり、様々な作業が淡々と繰り返されるなかで子供は成長し、時が進行していく。読み進むうちに、ノートが様々な思いとともにとどめ置かれた、ある時代の塊のようにも見えてきました。同時に、人の在る証なのだと思いました。そしてノートはずっと、この家の机のひきだしに在り続けたのでした。
今、私の日常は、内容こそ違えど、ノートが書かれた頃と同じように一年が過ぎてゆき、子供は暮らしに変化をもたらしていきます。そして、どうしても作らざるを得ない気持ちになってしまう事柄に遭遇し、衝き動かされるのです。
今回制作したノートブックシリーズは、ページをめくることが出来ないノートの形をした塊です。凝縮された証としてノートの形をいくつも並べようと考えました。制作することは、人生の輪郭を形作ることではないかと考えています。

全文提供: ギャラリーヤマグチ クンストバウ


会期: 2011年10月1日(土)~2011年10月22日(土)
会場: ギャラリーヤマグチ クンストバウ
レセプション: 2011年10月1日(土)17:00~

最終更新 2011年 10月 01日
 

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