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棚田康司:生える少年
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 8月 10日

《少女》(部分) 2011年 | 樟材の一木造りに彩色、銅パイプ | 181.5×105×78cm | 撮影:宮島径 | Copyright © TANADA Koji | Courtesy Mizuma Art Gallery

心象風景として人々の記憶に深く刻まれたヴァンジ彫刻庭園美術館(2008年9-12月)での個展以降、イタリア・パレルモのRiso Museo d'arte contemporanea della siciliaにて開催されたグループ展への招致、また2010年には第20回タカシマヤ美術賞を受賞するなど、棚田の活動は国内外から大きな注目を集めています。

約2年半ぶりの個展となる本展は全て新作の6点の彫刻で構成されます。 展覧会タイトルにもなった「生える少年」は、遠く空を仰ぎ、大きく腕を広げて私たちを迎えます。折れそうに細い身体からは圧倒的な存在感が放たれ、万事を受け止める包容力が充溢します。

また、先だって「ジパング」展(日本橋高島屋)にて発表された「少女」が表出するのは、舵を取り大海原へ漕ぎ出して行くような力強さと、助けを得ながらようやく立ち上がったような脆弱さ。境界線上に立ち現れた少女は何かを導く指標となり、踏み出した一歩の大きさを感じ取っていただけることでしょう。

本展に向け、素材としての「かたまり」と対峙し、格闘し、苦悩しながら制作に没頭したこの期間、世界を一変させる景色が私たちの目の前に現れました。 あの日、「生える少年」を制作していた棚田が真っ先に思ったのは家族のこと。 何かが本当の意味でリセットされてしまう不安感を抱えながら、かけがえのないものを守っていくために、何ができるのだろうと考えたと言います。

自然の猛威が当たり前にあった日常を流し去ってしまっても、残された「場」には時間の記憶があり、温もりや匂い、培ってきた歴史が確実に存在しています。その場所にはまた光が注ぎ、木々が芽吹くように、棚田によって一木から姿を与えられた少年少女たちは、まるでその地の養分を糧に芽吹いたかのごとく、上昇性をもって生命の源流を辿ります。

人間の非力さえ露呈したあの景色の前に、棚田自身も自らの「場」に立ち、取り巻く日常と向き合い、少年少女たちに命を与えることで、自らの均衡を保っているのかもしれません。

時期を同じくして9月22日(木)から10月10日(月・祝)まで青山・スパイラルガーデンにて開催される個展「○と一(らせんとえんてい)」でも計7点の新作が発表されます。 本展と併せ、棚田の作品を一堂にご覧いただける機会となっております。 スパイラルガーデンにも是非足をお運びいただき、より深度を増した棚田の作品世界を堪能いただければ幸いです。

全文提供: ミヅマアートギャラリー


会期: 2011年9月1日(木)-2011年10月1日(土)
会場: ミヅマアートギャラリー

最終更新 2011年 9月 01日
 

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