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福岡道雄―何をしていいのか分からない/成田克彦―SUMI
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 7月 06日

福岡道雄《何もすることがない、ミミズの自殺》1999年 | 合板、FRP | 183.5x122.5cm | 画像提供:東京画廊+BTAP | 東京 | Copyright© Michio Fukuoka

福岡道雄は1936年大阪府堺市に生まれ、1955年に堺市立工業高等学校建築家を卒業後、大阪市立美術研究所彫刻室に入室し、彫刻を学びます。1970年代以降、FRP・ブロンズで作られた直方体や立方体の上に、小波が立つ湖や川、人物像を含むアトリエ周辺の風景を再現する彫刻作品を制作し、1977年には第8回中原悌二郎賞を受賞しました。また、1990年以降には、漆黒の平面に電動彫刻刀で文字を繰り返し書き連ねる作品を発表しています。東京画廊+BTAPでは、1999年までに個展を5回ほど開催していましたが、作家が70歳を期に「引退宣言」をして以来、展覧会は行われませんでした。

本展では福岡道雄が1970年代以降に制作した立体・平面作品10点を展示いたします。平面作品には「何もすることがない」「何をしても仕様がない」「何をしていいのか分からない(左写真)」などといった作家のつぶやきが、FRPで固められた表面に刻まれています。一見、幾何学的な模様のように見えますが、言葉の反復は呪術的な情感を呈し、福岡の自省的な世界観が恬淡と示されています。また、立体と平面の作品群に共通しているのは、FRPが生み出す光沢感を帯びた黒色です。深淵な黒の色彩とおびただしい数の白い文字は、現代社会に生きる焦燥と虚無感を示唆するものです。

また本展では、もの派の中核的な作家として知られる成田克彦(1944-1992年)の彫刻作品≪SUMI≫(1968年)を合わせて展示いたします。もの派の作品はオリジナルの状態で現存していることが少なく、とりわけ成田の≪SUMI≫は、いわゆる木炭であるがゆえに、現在はほとんど作品が残されていません。東京画廊+BTAPは1968年に制作された大型作品4点をほぼ当時の状態にまで修復を行い、現代に蘇らせました。

福岡と成田の作品の黒色がもつ深みは、強固な存在感をもって鑑賞者に迫ってきます。それぞれの素材の物質性によって、きわめて現在的な問題を突きつける二人の作品を、この機会にどうぞご高覧ください。

全文提供: 東京画廊+BTAP|東京


会期: 2011年7月6日(火)-2011年7月31日(日)
会場: 東京画廊+BTAP|東京

最終更新 2011年 7月 06日
 

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