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美術の中のかたち―手で見る造形 桝本佳子展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 7月 01日

桝本佳子 《 山/壺 》 2005年

やきもの変化

平成元(1989)年度より開催している「美術の中のかたち-手で見る造形」展は、従来視覚のみに偏っていた美術鑑賞の機会を、視覚障害者の方にも提供し、あわせて作品に手で触れることで、健常者の方にも視覚以外の感覚器官を通じた美術鑑賞のあり方を探っていただこうという試みで、今年で22回目を迎えます。

今回は、陶芸の中に新たな魅力を生み出す若手作家の桝本佳子氏(ますもと・けいこ 1982年 兵庫県生まれ)を迎え、「やきもの変化(へんげ)」と題して、展覧会を開催します。

触れるということが作品鑑賞の大きな魅力であり、日常生活の中で発展してきた陶芸ですが、一度、美術館・博物館の所蔵品になれば、保存・保管の観点から決して触れることができない美術品へと姿を変えます。今回は、美術館で陶芸作品に触れることで、新たな鑑賞の可能性を探ります。出品予定点数 約20点

展覧会のコンセプト
この度の「美術の中のかたち」展では、陶芸作品の手触りと立体作品としての形の面白さを味わっていただくことを目的に、陶を用いたユニークな作品で知られる新進気鋭の作家・桝本佳子氏に制作を依頼しました。桝本氏は、皿や壺等の典型的な「やきもの」を独自に解釈し、見る者に驚きと笑いを与えるユニークな作品を制作しています。皿に描かれた日本地図が途中から立体的に飛び出していたり、一見、山水の絵付けの壺に見えるやきものの反対側には猿の親子がいたりと、その作品には、やきものへの問題意識や立体としての面白さが現れています。

今回、桝本氏は、美術館の中で、敢えて触れることの出来ない美術品としてのやきものから着想を得た新作を生み出します。兵庫陶芸美術館所蔵の兵庫の古陶をモデルに、それを材料から技法まで正確に真似た作品=「写し」と、そこから着想を得て新たに生み出された新作=「写し」が同列で並ぶ展示室では、美術作品が成立するまでの契機と過程に思いを馳せていただくことができるでしょう。各地の有名な窯場で焼かれたやきものを模倣した「写し」の作品は、陶芸の発展に欠かせないものですが、一方では、文様の意味や形態を曖昧に解釈して制作した現存作品も多く、オリジナルの作品に比べ価値の低いものとして捉えられる傾向にあります。しかし、見方を変えると、その曖昧さが味わいになり魅力となっているのも事実です。日用品として生まれたやきものがいつしか美術品となり、その美術品から現代の立体作品が生まれる今回の展覧会は、来館者に、やきものの定義を問いかけます。

様々に変化(へんげ)したやきものの手触りに意識を集中することで、新たなの魅力をひとつでも多く発見いただければ幸いです。

桝本佳子(ますもと・けいこ)略歴
1982年  兵庫県生まれ
2007年  京都市立芸術大学大学院修士課程陶磁器専攻修了
2008年  「東京ミッドタウンアワードアートコンペ」にて準グランプリ(グランプリ該当無)
個展(石田大成社ホール 京都)
2009年  「トーキョーワンダーウォール」(東京都現代美術館)にて立体・インスタレーション部門大賞を受賞
グループ展「現代工芸への視点―装飾の力」(東京国立近代美術館 工芸館)
2010年  「桝本佳子展―パノラマ 陶の風景―」(INAXガレリアセラミカ 東京、INAXライブミュージアム 愛知)
「TKG Projects #1」(TKGエディションズ 京都)
グループ展「mélange 龍門藍・桝本佳子展」(imura art gallery 京都)

関連イベント
アーティストトーク 
講師:桝本佳子氏
日時:7月31日(日)14:00-15:30
場所:レクチャールーム
※聴講無料(定員先着100名)

ワークショップ 
講師:桝本佳子氏
日時:10月1日(土)15:00-17:00 
場所:展示室+美術館建築内
「芸術の館友の会」共催(定員30名)(要申込・有料)

こどものためのワークショップ 
講師:桝本佳子氏
日時:10月22日(土)10:30-15:30 
場所:展示室+アトリエ2
小・中学生と保護者(定員30名)(要申込・有料)
※お問い合わせ:TEL:078-262-0908 こどものイベント係

全文提供: 兵庫県立美術館


会場: 兵庫県立美術館 1階 常設展示室4
会期: 2011年7月16日(土)-2011年11月6日(日)

最終更新 2011年 7月 16日
 

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