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Paintings: 02
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 6月 24日

木村彩子《nakaniwa》2011年|キャンバスに油彩|48.0×50.0(cm)|画像提供:GALLERY CAPTION|Copyright© Saiko Kimura

梅雨の雨が草花の苔むすような香りを漂わせ、夏の気配を感じさせる6月。季節の訪れが植物や風景の気配によって感じられるものだとすれば、木村彩子、源馬菜穂、百合草尚子の3作家によるグループ展〈paintings: 02〉は、そんな匂いたつような新しい絵画の息吹を感じさせてくれる展覧会である。

木村が描くのは、花や植物が描かれた風景だ。蜜蝋を混ぜた油絵具で描かれるという画面は、オイルパステルを思わせる明るく柔らかい絵肌が特徴である。画面全体から光溢れる眩さを感じるのは、夏の日差しの強さではなく、絵具がのせられた部分と余白とのバランスによって生み出された光の表現のためだ。

源馬の作品は、広々とした草原を思わせる風景のなかに後ろ姿の人物が小さく描かれる心象風景とも思える絵画だ。源馬の作品の特徴は、中央に佇む人物のまわりを囲むように描かれる明るい色彩のストロークだ。伸びやかに描かれる筆跡が、画面全体に動きを作り出し、空間の広がりを感じさせる。

百合草は、自然や植物などをモチーフに清涼な空気感を感じさせる絵画を制作している。ドローイングを思わせる軽やかなタッチとユーモラスな視点が合わさり、不思議な世界観を作り上げている。また、陶による立体作品『添い寝』、『こっそりクマ』は、笑いと謎で観客を魅了することだろう。

これら3作家の特徴は日常的な光景をモチーフとすることや、優しく柔らかい色彩などが共通点として挙げられるだろう。だが、それぞれがまなざしを向けた先は異なる。その違いを比較しながら見ると、季節の変わり目のように違いが浮き立ってくることだろう。

最終更新 2015年 11月 03日
 

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