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藤本由紀夫:遠近
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2008年 12月 28日

藤本由紀夫 perspective/P(2008年)、Photogram copy right(c) 2008 Yukio FUJIMOTO / Courtesy of ShugoArts

「絵画は、近いものを遠いように思わせること奇蹟さながらである」とレオナルド・ダ・ヴィンチは言う。

「ここ」にあるものを、ほんの少しずらして「そこ」に配置するだけで「遠近」という世界が形成される。

「空間」においても「時間」においても、そして様々な「関係」においても、我々は「遠い・近い」という言葉を使う。

日常のありふれたモノをほんの少しズラすことにより、新しい世界を発見することに興味を持ち作品を制作してきたが、私が行ってきたことは、感覚・知覚・思考の連携により作り出すことにおいて「遠近法」と近いものであると気づいた。「遠近」とは、我々が「どのように」見ているのか、聞いているのか、考えているのかを映し出す鏡のようなものである。

その遠近の世界は実はどこにもない世界である。我々の頭の中に形成された、新たな次元の世界である。

藤本由紀夫

シンプルなオブジェによって見ること、聞くことの新しい側面を我々に発見させてくれる作品を制作してきた藤本由紀夫は今回の展覧会タイトルを”遠/近 Perspective”つまり、遠近法としました。これは藤本が“「視覚および聴覚機能を通じての遠近法を探求せよ」という言葉をレオナルド・ダ・ヴィンチのメモに見つけてから「遠近法」という世界のイメージが広がった。”ということに由来しています。「遠い」「近い」とは認識のために我々が作り出している方法、つまり実際には存在しないものを創造し、それによって世界を認識する方法なのではないだろうかと作家は考えます。そしてそれはなにより我々が想像力を使って日常を過ごしている証拠なのではないでしょうか。

1950年名古屋市生まれ。2001年ヴェネツィア・ビエンナーレの日本館代表としての参加に続き、2007年には国際部門にて出品。国内では1997年から一年に一日だけ開催する展覧会「美術館の遠足」を2006年までの10年間、企画・運営し、鑑賞者のみならず美術館運営側にも新しい表現活動のあり方を提案し話題になりました。2007年、広島市現代美術館での個展をはじめ、西宮市大谷記念美術館、国立国際美術館、和歌山県立近代美術館の3館で個展を同時開催。2008年、開館20周年記念コレクション+(プラス)ひびきあう音・色・形(高松市美術館、高松)、小杉武久+藤本由紀夫展「音楽」(国際芸術センター青森、青森)、ライト・[イン]サイト 拡張する光、変容する知覚(NTTインターコミュニケーションセンター[ICC]ギャラリーAほか、東京)など。

※全文提供: シュウゴアーツ

最終更新 2009年 1月 17日
 

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