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sweet memory-おとぎ話の王子でも
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 5月 31日

謝琳≪Growing≫ 2006年、卵、砂糖、発泡スチロール
画像提供:京都芸術センター

「sweet memory―おとぎ話の王子でも」では、お菓子・甘いものを題材に作品制作を行う作家によるグループ展です。

私たちの生活に甘いものが欠かせないのはなぜでしょうか。それは、人間に必要な栄養素の一つとしての存在だけではなく、時に私たちへ安心や幸福感を与えるからでしょう。その時の思い出は、口に残る味覚とともにより鮮明に記憶されています。幼いころ、母親からもらった一粒のラムネ菓子が口でほどける感覚、母の顔。心に刻まれた記憶と味覚の関係は、自分とより近い人との関係を鮮やかに甦らせます。本展では、味覚についてそれぞれの表現を行う4名の作家を紹介します。

出品作家である、謝琳は現在美術作家としてワークショップ等も手掛ける他、広告などでお菓子を扱う作家でもあります。彼女の作品は、お菓子・甘いものをモチーフとする以前にそれらが「日常を切り取ったもの」であることに基点を置いています。本展出品予定の≪Growing≫は、ウエディング・ケーキをモチーフとしています。その巨大にそびえ立つ様は、何かのシンボルのようでもあり、権威的にも見えます。砂糖が表現する「虚実の交差」。私たちにとって砂糖が何であるか、その本質を問う作品です。

河地貢士は、漫画やスナック菓子など日本に馴染みの深いモノをモチーフに作品を制作します。彼もまた、自身の身の回りにあるモノを用いていますが、それらの作品は時にコミカルでありながらそのモノの存在を強固に変貌させる力を持っています。例えば、≪Embalming 〜Potato Chip〜≫は割れたポテトチップスを「金継ぎ」という伝統技法で再生させます。それは、もはや私たちの知る駄菓子の域を越え、だれかにとって「大切なモノ」であった痕跡を見せているかのようです。

一方、林智子は遠距離恋愛へのオマージュをモチーフに作品を制作を行ってきました。新作≪tear mirror-jewel ≫は、涙とそれに纏わる物語を伝統的な和菓子「琥珀」に込めた作品です。涙の物語は、人間関係に刻まれた感覚。結晶化した、美しい琥珀は私たちへ感情と記憶そして味覚への繋がりを感じさせてくれることでしょう。

瓜生祐子は、作品制作に対して「ひとつの世界をつくること」と話します。その世界は、日常のなかで当たり前に過ぎてしまう小さなものばかりです。彼女によって描かれる世界とは、食べ物の中に広がる風景です。食という生きる上で不可欠なものをテーマとすることで、私たちの目の前には常に新しい世界が無限に登場し、一方でその世界は食べることで儚く消え去ってく。日常に隠れた小さな世界の発見とその儚さを表現します。

人の記憶、時には人間関係をもつなぐ味覚。本展では、これらの作家の表現を通じて、日々の感覚が芸術となりうるであろうことを提示し、こども達の個々にある創造・表現の可能性を引き出します。

出展作家
謝琳(1967年東京都生まれ)、河地貢士(1973年岐阜県生まれ)、林智子(1980年兵庫県生まれ)、瓜生祐子(1983年京都市生まれ)

※全文提供: 京都芸術センター


会期: 2011年7月20日(水)-2011年9月11日(日)
会場: 京都芸術センター ギャラリー北・南 他

最終更新 2011年 7月 20日
 

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