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山本雄教:し・てん
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 5月 16日

《どこへ行く-竹林図的図-》2011年
鳥の子紙、墨、鉛筆、ボールペン|1800×5820mm|画像提供:Gallery PARC|Copyright© Yukyo Yamamoto

美術家・山本雄教(やまもと・ゆうきょう 京都・1988~)は、成安造形大学日本画クラスを卒業後、2011年より京都造形芸術大学大学院美術表現専攻日本画領域に在籍しながら、日本画の画材・技法だけにとらわれない作品制作を続けています。

一見すると霧の立ちこめる竹薮のようにも見える《どこへ行く-竹林図的図-》は、よく眼を凝らせば「交差する点字ブロック」が無数に描かれ、また幾何学模様のような《system》は、画面を無数の「エスカレーター」が隙間無く埋め尽くしています。

「対象は、普段とは違う姿に転じていく。それは別物になっていくわけではなく、普段見えていない面が見えたり、ある面が強調されたものである。その結果、どういうものが生まれるのか。」と語る通り、山本の取り上げる「点字ブロック」や「エスカレーター」、「電柱」や「テレビモニター」などのモチーフは、いずれも我々が日常に目にする対象ばかりですが、それらが姿はそのままに、すこしの視点の転換により描かれることで、そこに違和感や曖昧さに満ちた見慣れない世界がつくり出されます。

本展では、5mを超える《どこへ行く-竹林図的図-》などの作品に加え、PARCの展示空間を活かした新作を含むおよそ6点により構成します。山本の描き出す、見慣れた風景・見慣れない光景をお楽しみください。

アーティスト・ステイトメント
日常の中で、何気なく見過ごしているもの。
認識はしていても、当たり前すぎて日々の中に埋もれているもの。
そういったものの存在にふと気づかされ、意識する瞬間がある。
それはまるで新しい出会いのような、新鮮な感覚である。
それまでは景色の一部でしかなかった対象に、
気づいた瞬間から違和感のようなものが生まれる。
そしてそれは、自分自身の日々の生活の中の、
言葉に出来ない違和感に重なっていく。
それらを平面上に描くことで、その違和感は形となっていく。
対象は、普段とは違う姿に転じていく。
それは別物になっていくわけではなく、
普段見えていない面が見えたり、ある面が強調されたものである。
その結果、どういうものが生まれるのか。
私自身が楽しみにし、制作している。

山本 雄教 Yamamoto yukyo
2010 - 成安造形大学日本画クラス 卒業
2011 - 成安造形大学日本画クラス研究生 修了
- 京都造形芸術大学大学院美術表現専攻日本画領域 入学

[個展]
2011 - どこへ行く(ギャラリーはねうさぎ / 京都)
2010 - 米騒動(成安造形大学内コンテンポラリーギャラリー / 滋賀)
- 連続していく対象(ギャラリーはねうさぎ / 京都)

[おもなグループ展]
2011 - BOX美術館展10(ギャラリーはねうさぎ / 京都)
- K2展(京都市美術館別館 / 京都)
- 43th KAKOUKAI展(京都市美術館 / 京都)
2010 - 第四回-今-toki-展(ギャラリーマロニエ / 京都)
- 輪 成安造形大学日本画クラス16人展(むろまちアートコート / 京都)
- 第二回Kyoto Current展(京都市美術館別館・高島屋京都展)
- I LOVE あめりか(ギャラリーはねうさぎ / 京都)
2009 - HOPEWORK展(ギャラリーCASO / 大阪)

※全文提供: Gallery PARC


会期: 2011年6月7日(火)-2011年6月19日(日)
会場: Gallery PARC

最終更新 2011年 6月 07日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


《どこへ行く-竹林図的図-》2011年|鳥の子紙、墨、鉛筆、ボールペン|1800×5820mm|画像提供:Gallery PARC|Copyright© Yukyo Yamamoto

水墨画風に竹薮が描かれたように見える竹林図。だが、実は視覚障害者用の点字ブロックが交差するさまを日本画材によって水墨画風に描き出した日本画である。

日本画において点字ブロックをモチーフとしたのは、山本太郎の『白梅点字ブロック図屏風』(2006)が記憶に新しい。だが、モチーフが同じ点字ブロックでも、山本太郎が描くのは、風景としての点字ブロックあり、山本雄教の点字ブロックは竹薮に見立てられた記号としての点字ブロックである。点字ブロックは視覚障害がある人のためのコードであるが、日本画もまた花鳥風月などの規定のコードがある。それらを読み解くことで日本画は成立してきたといえよう。山本雄教は、既存の都市のコードをモチーフに、日本画に新たなコードを取り入れようとしているようだ。

また、山本雄教は支持体に鳥の子紙を用いているが、紙がくしゃくしゃにされて揉み紙にした状態で描いている。そのため、和紙の持つ厚みが凹凸を生み出し、画面に微細な変化を生み出している。この紙の凹凸は点字ブロックの凹凸とも共鳴するが、平面上に立体的な物質感が表れ、見えながらも見えない道へと鑑賞者を絵画へと導く。

モチーフのユニークさと日本画材の研究・理解が新たな「視点」を感じさせる「展示」だ。


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