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小谷元彦:幽体の知覚
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 5月 13日

小谷元彦 《Ruffle (Dress 04)》 2009–10年
木、レーザープリント
100×φ336 cm、53.3×78 cm(写真)
作家蔵

現代美術アーティストの小谷元彦(1972年-)は、東京藝術大学で彫刻を学んだ後、彫刻、写真、ビデオ等さまざまなメディアを用いて、従来の彫刻の常識を覆す作品を発表してきました。その造形表現と美意識は高い評価を受け、2003 年にヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表の一人として選ばれるなど、国内外でめざましい活躍を見せています。

小谷は、痛みや恐怖などの身体感覚や精神状態をテーマに見る者の潜在意識を刺激するような作品を制作します。毛髪を編んだドレスや拘束具をつけた動物、異形の少女、屍のような武者の騎馬像など、一つの解釈に帰着しえない多層的なイメージは、美と醜、生と死、聖と俗の境界線上で妖しい魅力を放ち、年齢や性別を問わず観る者の感性を揺さぶります。

彫刻というメディアに対して鋭敏な意識をもつ小谷は、彫刻特有の量感や物質性を逆手にとるかのように、実体のない存在や形にできない現象、すなわち「幽体」(ファントム)をとらえ、その視覚化を試みてきたといえます。この展覧会では、10年以上にわたって発表されてきた小谷の初期作品から最新作までを一堂に集めるほか、「映像彫刻」とも呼ぶべき体験型の大型映像インスタレーションを紹介します。

なお本展は、2010年11月~2011年2月に森美術館で開催された同タイトルの展覧会を、静岡県立美術館の展示空間にあわせて再構成したもので、森美術館では未発表の新作映像インスタレーション1点が出展される予定になっています。

ロダンをはじめ近代彫刻史の展開を紹介するコレクションが並ぶ美術館で、小谷の表現は、彫刻の概念を拡張するにとどまらず、美術そのものの新たな魅力と可能性を提起してくれることでしょう。

小谷元彦
1972 年、京都府生まれ。1995 年に東京藝術大学美術学部彫刻科卒業、1997 年に東京藝術大学大学院美術研究科修了。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館(2003 年)をはじめ、リヨン現代美術ビエンナーレ(2000 年)、イスタンブール・ビエンナーレ(2001 年)、光州ビエンナーレ(2002 年)など数多くの国際展に出品。主な個展に、「モディフィケーション」(キリンプラザ大阪、2004 年)、「小谷元彦/ Hollow」(メゾンエルメス、2009 − 2010 年)、主なグループ展には、「日本ゼロ年」(水戸芸術館現代美術ギャラリー、1999 年)、「現代美術の皮膚」(国立国際美術館、2007 年)などがある。

トークショウ
「生と死、聖なるものと俗なるもの(仮)」
宗教人類学を専門とする植島啓司氏の見地から読み解いた、小谷作品の解釈や感想、またその魅力について、小谷氏本人の制作意図を織り交ぜつつ対談していただく。
出演:小谷元彦(美術家・彫刻家)×植島啓司(宗教人類学者)
5月28日(土)15:00~16:30 当館講堂にて
※定員250名 申込不要・先着順・無料

アーティストトーク
本展作家の小谷元彦氏に、インスピレーションを受けた歴史上の美術作品、映画などを紹介していただきながら、作品制作のプロセスや、作品の根底にある考えについてお話をしていただきます。
講師:小谷元彦(美術家・彫刻家)
6月5日(日)10:30~11:30 当館講座室にて
※定員40名 申込不要・先着順・無料

担当学芸員によるフロアレクチャー
6月11日(日)、7月3日(日)各回 14:00~15:00 展示室にて
※集合場所:企画展第1展示室 申込不要(観覧料が必要)

今後の同展巡回スケジュール
■ 高松市美術館  会期: 2011 年7 月22 日[ 金] -9 月4 日[ 日]
■ 熊本市現代美術館 会期: 2011 年9 月17 日[ 土] -11 月27 日[ 日]

※全文提供: 静岡県立美術館


会期: 2011年5月28日(土)-2011年7月1日(日)
会場: 静岡県立美術館

最終更新 2011年 5月 28日
 

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