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高橋将貴:装備(equipment)
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 5月 09日

《guitarist》2011年
plaster, acrylic|h. 29.0 × w. 18.0 × d. 18.0 cm
画像提供:ギャラリーゼロ
Copyright © Takahashi Masaki

高橋将貴(Takahashi Masaki)は1973年、東京に生まれました。高橋はこれまで、制服(uniform)や衣装(Outfit)を身に付けた人をもとに、絵画や立体を制作してきました。またそれら以外のものであれば、その単体のみを描いてきました。制服や衣装を際だたせるため、高橋は白地の無背景に無表情・棒立ちといった、極力人間に関する情報を省くことによって、身に付けた物本来の表象を明確にする手法を貫いてきたのです。

今回高橋将貴は、人物にギターなどの少しのアイテムを付属させています。「物と物、表象と表象を組みあわせることで彫刻的に一歩進んだ関係性を探りたい」と、高橋は言っています。ロラン・バルトの「表徴の帝国」の言もあるように、高橋の思考と視点は、明確に日本人の表現の特質を物語っています。「萌える」ことの本質もまた、表徴の上に成り立っているのでしょう。日本人の、そして今後はグローバルな社会の繋がりと思考を考えるうえで、高橋の作品は新たな意味を持つことでしょう。立体・絵画を発表します、「装備」と題しました高橋将貴の新作展にご期待下さい。

※全文提供: ギャラリーゼロ


会期: 2011年5月16日(月)-2011年6月4日(土)
会場: ギャラリーゼロ
オープニング・レセプション: 2011年5月14日(土)16:00 -

最終更新 2011年 5月 16日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


《guitarist》2011年
plaster, acrylic|h. 29.0 × w. 18.0 × d. 18.0 cm
画像提供:ギャラリーゼロ
Copyright © Takahashi Masaki

人と会ったとき、その人のなにを記憶するだろうか。声や体型、髪型も考えられるが、多くの場合その人が身につけている「もの」が記憶に残ることの方が多いのではないだろうか。

カウボーイハットをかぶった人、ヘッドホンをした人、マグカップをもつ人。白い背景に「装備」品ひとつを身につけ(持ち)たたずむ人物が描かれた絵画や彫刻作品が展示される高橋将貴の作品も、人物が中心モチーフと見えるかもしれない。

だが、高橋の作品は人が身につける「装備」にこそ関心があり、人物ではない。先の例で言うならば「カウボーイハット」、「ヘッドホン」、「マグカップ」が作品のモチーフであり、人物ではない。高橋の過去の作品を振りかえれば、ほとんどが白の背景に無表情・棒立ちの人物像が多く描かれているのも、人物ではなく衣装や制服を際立たせるための手法である。例えば、出品作品のひとつである日産自動車の「サニー」とその所有者らしき人物の彫刻作品も逆である。ここでは自動車がモチーフであり、人物はサニーの「装備」品なのである。

高橋はニュートラルな人物造形、細部まで巧妙に作り上げられた平均的なイメージとして「装備」を表象する。今展では、『Mug』(2011)において、初めてマグカップを持った右手が上がった状態で描かれ、「大きな動き」を見せる(マグカップを持って棒立ちの状態では、不自然だからだろう)。ものと人との関係性を表象して見せる高橋の新展開である。


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