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わざゼミ2010報告展
編集部ノート
執筆: 平田 剛志   
公開日: 2011年 5月 08日

今村遼佑《白色と雑音》2009年
Copyright © Ryosuke Imamura
画像提供:京都芸術センター

    「わざゼミ」とは、京都芸術センターが次代を担うアーティストを対象に伝統工芸の見学や実習の機会を提供する長期講座である。2010年度は審査を経て天野萌、一柳綾乃、今村僚佑の3名の作家が参加した。今展では、それぞれが「わざゼミ」で経験したことをもとに、新たに制作した作品が展示される。
    天野は羊毛と木による立体作品『立っている生き物』、床の間にカラフルなアクリル板を人型にカットして重ね合わせた『床の間のAfter noon blink』を展示。1つは異なる素材の組み合わせ、他方は同じ素材の組み合わせで、ものとものが組み合わされる(アン)バランスの妙を楽しめる。
    一柳は染色による空間インスタレーション『つつまれて、抱きしめる。』と絵画を展示。温もりのある色彩が清々しい空気を放っている。
    今村は黒檀、胡桃、欅、桜などさまざまな木材を素材に制作した『アイスクリーム・スプーン』と金属でできた回転木馬が平積みされた本の上で回転する『本と回転木馬』を出品。異なる木材で制作されたアイスクリーム・スプーンはそれぞれの素材がもつ木目の色合いが美しい。普段は使い捨てにされるスプーンも、木が異なるだけで素材や技術が見えてくる。
    しかし、会場に並ぶ作品を見渡すと、鑑賞者が「伝統工芸」と聞いて想像するような技術は見えてこない。今展の3人の作品のどこに「わざ」があるのかと思われるかもしれない。だが、技術とはものや作品の背後にあるものだとすれば、彼らの手によって今後生れてくる作品は「伝統」の上に積み重ねられた「技術」だとは言えないだろうか。今展の3作家の「わざ」が磨かれていく今後を楽しみにしたい。

最終更新 2011年 5月 07日
 

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