qp:残す |
編集部ノート |
執筆: 石井 香絵 |
公開日: 2011年 4月 18日 |
展示されている作品は主に水彩画で、人物の背景や前景にはグロテスク文様を思わせるS字風の曲線が多数配置されている。曲線によって全体にリズムが与えられているようである。楽譜のようでもある。描かれた人物は明るいオレンジ色の肌をしており、寒色系の背景に良く映えていた。人物は衣服を纏っていないものが多く、抽象化された身体に目だけが描かれているため影絵のようにも見える。 さほど広くない会場の割に観客数は多く、皆なかなか立ち去ろうとしないのが気になった。短時間では捉えがたい何かをそれぞれが感じていたのかもしれない。実際にしばらく眺めていると、明るい色も沢山あるはずなのに全体的に静かな印象であることや、曲線や格子や木の枝と枝との隙間を埋める滲みのある背景の面白さなど、様々な発見がある。個展のタイトルは「残す」だが、どの作品もタイトルに似ず、一時的ではかない雰囲気を湛えている。これは画材のみのせいではないだろう。 本展の会期中にはまた、qpの企画による展示「べつの星」がユトレヒトで、またqpと二艘木洋行によるユニット・城戸熊太郎の展示「こなごな」がソーンツリーギャラリーで開催される。※注 「べつの星」は女性作家10人によるグループ展、「こなごな」はウェブ上の描画ツール「お絵かき掲示板」を用いた展示。併せて観ることで、この作家の観ること、描くことへの探究心をより多角的に知れる機会となりそうだ。 ※(注) 「べつの星」 2011年4月12日(火)-24日(日) http://www.nowidea.info/?p=2601 会期: 4月2日(土)3日(日)9日(土)10日(日)16日(土)17日(日)23日(土)24日(日)29日(金)30日(土) |
最終更新 2015年 11月 02日 |