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PLATFORM2011:浜田涼・小林耕平・鮫島大輔 -距離 を はかる-
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 4月 07日

《2-9-1》2009年
video|run continuously in loop|12:44min
Courtesy of YAMAMOTO GENDAI

心はいつも格闘している。社会問題や世界情勢を憂い、歴史や芸術に思いを馳せ、手にする愛や望む未来に心寄せては、またざわめく。“自分という実感”を新たな角度で考える一筋の手立てとして現代美術と向き合ってみよう。それが現代を生きる私たちの心が生み出した、私たち自身の美術である以上、現代美術は今の自分と切り離された遠いところにある美術ではなく、いつもの自分の領域に存在する美術、自分に内在する美術として、きっと何かを示してくれるにちがいない。PLATFORMは、現代美術で考え、現代美術を実感する場。2011年の第2回目は、浜田涼と小林耕平、そして鮫島大輔。写真で自身と世界との距離感を問う浜田。明確でありながら掴みどころのない映像によって観者の思考をするりとかわす小林。日常風景を淡々と把握し奇妙な空間を描く鮫島。三者の世界を前に、あなたは何を見、何を考え、そして何を実感するだろうか?

展覧会の見どころ
「PLATFORM」は、幅広い視野で現代美術の動向の一端を紹介する展覧会です。2010年より継続的に開催し、複数のアーティストの個展の集合によって形成されます。「PLATFORM」のコンセプトは、「現代美術で考え、現代美術を実感する場」を提示すること。現代美術を遠いところにある美術ではなく、身近な存在として実感できる場となることを目指しています。

第2回にあたる2011年の「PLATFORM」では、「私と世界との距離感」をテーマとし、浜田涼、小林耕平、鮫島大輔を取り上げます。それぞれ過去作品から近作まで、一部屋1作家での展示を展開します。会期中はギャラリートークやパフォーマンスなど様々なイベントを予定しております。

【出展作家】
浜田 涼 Ryo HAMADA (1966~)
対象の曖昧な写真を用い、その表面にアクリルやその他加工を施すことで自身と周りの世界との境界を推し量る作品を発表している。本展では初期の作品から近作まで一連の作品53点を紹介する。
1966年東京生まれ。女子美術大学芸術学部洋画科卒業。
【展覧会】「水戸アニュアル'96“プライベートルーム”」(水戸芸術館)、「VOCA展2006」(上野の森美術館)等

小林 耕平 Kohei KOBAYASHI (1974~)
身体やモノ、空間の動きを明確に映しながらもどこかつかみどころのない映像作品を生み出している。本展では新作も含めた8点の映像作品やインスタレーションを紹介する。また、core of bellsとのパフォーマンスも開催する。
1974年東京生まれ。愛知県立芸術大学美術学部油画科卒業。
【展覧会】「六本木クロッシング2007 未来への脈動」(森美術館)、「ヴィデオを待ちながら―映像、60年代から今日へ」(東京国立近代美術館)等

鮫島 大輔 Daisuke SAMEJIMA (1979~)
平面や球体に日常風景を描き、奇妙な空間を生み出している。本展では新作を含む平面と球体の作品28点を展示する。
1979年兵庫県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科修了。トーキョーワンダーウォール2002大賞受賞。
【展覧会】「第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展」(川崎市岡本太郎美術館)等

【関連プログラム】 ※1~5はすべて申込不要、参加無料。ただし展覧会鑑賞券が必要です。
1.ギャラリートーク 会場:各展示室 
4月16日(土)15:00~16:00鮫島大輔
24日(日)15:00~16:00浜田涼
5月7日(土)16:00~17:00小林耕平

2.トーク「それぞれの距離」浜田涼×小林耕平×鮫島大輔
4月23日(土)16:00~17:30 会場:中央ロビー

3.パフォーマンス「運送としょうゆとかぐや姫と先生とライオンと吉田くん」
小林耕平 × core of bells
4月23日(土)11:30~15:30、5月7日(土)11:30~15:30  会場:展示室
core of bells : 2003年湘南で結成。カテゴライズ不能の自由極まりないサウンドと、一見「非・音楽」とも思えるアイデアでその音楽性を揺るがす手法が評判を呼び、目を疑うほどに珍奇かつ圧倒的なステージングで話題を集めている。

4.パフォーマンスライブ「near, far, near, far」
東山佳永(踊り手/artist)×橋本和昌(作曲家/演奏家)
4月17日(日)14:00~14:30  会場:中央ロビー
Kae TOUYAMA : 2007年より美容院や店舗など多様な場所で作品を制作、発表。様々な素材・手法を用いて、空間・身体とともに構成し、時空間を創りだす。「ユトリロユルリト」名義では各回、他分野のアーティストと3人で作品を制作。表現者として舞台や映像、アートプロジェクトや誌面などでも活動している。
Kazumasa HASHIMOTO : 現在までに5枚のオリジナル・アルバムと1枚のサントラ盤を発表。自身の作品以外では、第61回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞した『TOKYO SONATA』(監督:黒沢清)で音楽を担当した他、CMや舞台の音楽制作、他アーティストのプロデュースなど、その活動は多岐に渡る。

5.鑑賞プログラム「テーマ:もののかたち」
【A】拡大!美術館【B】トコトコ美術館 事前申込
日程:【A】5月14日(土)13:30~14:30 【B】5月14日(土)15:00~16:00 場所:展示室
対象・定員:【A】小学2年生以上・5名 【B】3歳~小学1年生+保護者・5組 講師:当館学芸員
内容:【A】テーマに沿って作品を言葉に変換し楽しむ。【B】テーマに沿って鑑賞、読み聞かせ、工作を行う。

※全文提供: 練馬区立美術館


会期: 2011年4月16日(土)-2011年5月29日(日)
会場: 練馬区立美術館

最終更新 2011年 4月 16日
 

編集部ノート    執筆:田中 みずき


《2-9-1》2009年 video
run continuously in loop|12:44min
Courtesy of YAMAMOTO GENDAI

    ボールのような、真ん丸の球体に、住宅街や夜の街を描いた鮫島大輔。作品の回りをくるりと回りながら、一点透視法の遠近が球体でも成り立っていることに驚きつつ、作品をまじまじと見つめてしまう。目の前の、手でつかめそうな球体の中に全世界が映りこんでいるような錯覚。かと思うと、平面の絵画では、カバーで覆われた車などが描かれる。観てわかったつもりになったり、見えないものが描かれていたり、もどかしくて見つめてしまう。
    浜田涼は、ピントのぼやけた写真のような作品。カラーコピーやフィルムなどが使われているのももあれば、絵具で描かれたものもある。遠すぎてぼやけたり、動いていて見えなかったり、おぼろげなだったはずのものが画面に固定されているギャップにどきりとさせられる。
    小林耕平は、映像作品とインスタレーション・パフォーマンス。人影が幾何学的な線でできた空間で動き、位置関係があやふやになる作品や、作者のパフォーマンスとナレーションが噛み合いそうになりながらズレていく映像など、これもまた観ているつもりで観えていないような気にせさられる。鮫島、浜田、小林の三人とも、個々に表現は違いながら、おぼろげなものを固定しようとする姿勢が見えてきて面白い。観賞後、色々なものが見えなかったと思いながらも親近感を覚えてしまうのではないだろうか。


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