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山本直彰:帰還
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 2月 15日

2010年コバヤシ画廊個展会場風景
《帰還 VIII》
薄美濃紙、アートグルー、岩絵具、墨、箔、パネル
201×538.2cm
画像提供:コバヤシ画廊

従来の日本画の枠組みにとらわれない作品を制作し続ける山本直彰。1990年代に民主化に揺らぐ政情不安定なプラハでの経験から作られた路上に打ち捨てられた本物の「ドア」を支持体とする物質感溢れる「DOORシリーズ」で、大きな転機を得、その後、深い黒を切り裂き滑空/落下するイカロスを描いた「IKAROS」シリーズを経て、近年は床板に広げた和紙に、膠に溶かした煤と顔料を浸して描いていく手法を用いています。

本展覧会は近年発表している「帰還」シリーズを中心に発表致します。201×452cmの大作をはじめ、新作の大作3−4点と小品を画廊内に展示予定です。

作家コメント
いつからか「遠ざかる感覚」に密かな歓びを覚えるようになった。何か遠ざかるのだろうか。時か我が身か、絵画という僕と僕自身の虚ろな距離に吸い込まれる記憶の未来であろうか。そこは始めから崩れかけているのか、僕が見ること触ることによって朽ちてきたのか、徐々にその姿が覆い被さってきては遠のいて行く。その行き来の道すがら、できれば言葉を詩人たちが命がけで紡ぐように、詩の宮殿のようなものを創りたいのだと思ったりもした。
しかし、何をしたいのか……僕は
そして、僕は何処へ帰ろうとしているのか 何処へも帰れはしないのに

猥雑な現実の向こうに、確かに聞こえる風の音。その束が消えそうになりながら列なっている。その糸を手繰りながら、僕はその上を歩いているのだ。いつ落ちるかもしれないその上を。これからも生き続けなければならないどうにもならない空虚の上を。

この冬、何者かが厳しく僕の扉を叩いていた。「あなたに言いたいことがある」この言葉が頭上から聞こえてきた。シモンはこう答えた。「どうぞ仰って下さい」製作中に何度か聞いて幾度か同じように答えた。
人生の大半は後ろめたい。伴奏ばかりで歌はない。
「何もない。その何もないところに風だけは吹いているのか?」

生の欲望、そして死への欲望。その休憩時間を6月の風がそよぐ。紅い葉が小きざみに揺れる。
ああ、ああ……と僕はつぶやく。

山本直彰 Yamamoto Naoaki
1950年 横浜生まれる
1975年 愛知県立芸術大学大学院日本画科修了
1992-93年 文化庁芸術在外派遣研修員としてプラハに滞在
2009年 武蔵野美術大学客員教授
2010年 第60回芸術選奨文部科学大臣賞受賞

主な展覧会
1975年 「第1回春季創画展」高島屋, 東京[-06]
1987年 「第5回創画展」東京都美術館、他各地巡回 [-05]
1989年 「第10回山種美術館賞展」山種美術館, 東京 [95, 97]
2001年 「椿会展」資生堂ギャラリー [以降04年まで毎年出品]
2002年 「第1回東山魁夷記念日経日本画大賞展」<入賞>ニューオータニ美術館,東京 [04年]
2003年 「現代の日本画–その冒険者達」岡崎市立美術館
2004年 「超日本画宣言-それはかつて日本画と呼ばれていた」練馬区立美術館
2008年 「新収蔵作品展 -『賛美小舎』上田コレクションより」東京都現代美術館, 東京
2009年 「山本直彰展」平塚市美術館, 神奈川
1986年よりコバヤシ画廊などで個展多数。

パブリックコレクション
文化庁/東京国立近代美術館,東京/東京都現代美術館, 東京/国立国際美術館, 大阪/練馬区立美術館, 東京, 横浜美術館, 神奈川/平塚市立美術館, 神奈川/佐久市立近代美術館, 長野/資生堂アートハウス, 静岡, プラハ国立美術館, プラハ/チェコ/プラハ国立ナープレステック博物館, プラハ/チェコ

※全文提供: コバヤシ画廊


会期: 2011年3月28日(月)-2011年4月9日(土)
会場: コバヤシ画廊
オープニング・レセプション: 2011年3月28日(月)17:30 -

最終更新 2011年 3月 28日
 

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