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Flowing Narrative / Following Narrative
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 2月 04日

画像提供:art project room ARTZONE

art project room ARTZONEにて開催される京都造形芸術大学 情報デザイン学科先端アートコースに在籍している4回生の鬣恒太郎、田上穂波、吉本加奈子、3人のアーティストと、キュレーションを行う堤拓也の4人によるグループ展情報。。

本展のタイトルを直訳すると『浮遊する物語、次の物語』となり、広義の意味での「Narrativity(物語性)」にスポットを当てた展覧会です。

僕たちがNarrativeという言葉に含ませているのは、作品をつくる上でのコンセプトであり、作家自 身が体験した個人的なストーリーでもあり、また神話のような大きな物語、あるいは僕たちが生きてい く上で経験されるあらゆるイメージの集合体のことでもあります。

現代では、誰もがイメージのデータベースに容易にアクセスできるようになった故に、「本当に新しいもの」を「新しいもの」として受け入れられないという逆説的な事態に陥っているのではないかという感覚を『Flowing』つまり『浮遊する』という言葉で表しました。今回はそのような感覚から、果たしてどうのような表現形態がクリエイティビティの可能性として残されているのかを模索していきます。それはすなわち、作家の選択性の起源のようなものを声を大にして見せるということなのです。

ここで村上春樹のテキストを引用し、もう少しだけ説明を加えたいと思います。

数値そのものにはとくに問題はなかった。ただの数値だ。
「この程度のものなら洗いだしで十分でしょう」と私は言った。
「シャッフリングです。私はシャッフリングのことを言っておるんですよ。私はあなたに洗いだしとシャッフリングをやっていただきたい。そのためにあなたを呼んだ。洗いだしだけならとくにあなたを呼ぶ必要はないです」
「その最後にページをよく見て下さい。シャッフリングの使用許可がついているはずです」
私は言われたとおり、最後のページを開いて目をとおしてみた。たしかにそこにはシャッフリング・システムの使用許可がついていた。何度も読みかえしてみたが、それは正式なものだった。サインが5つもついている。まったく上層の人間が何を考えているのか私には見当もつかない。穴を掘ったら次はそれを埋めろと言い、埋めたら今度はそれをまた掘れと言う。迷惑するのはいつも私のような現場の人間なのだ。
「結構です。洗いだしは今ここでやります。そして洗いだし済みの数値をもって家に戻り、そこでシャッフリングをやります。シャッフリングにはいろいろ用意が必要なんです。そしてそのシャッフリング済みのデータを持ってまたここにうかがいます」
「3日後の午後までにはどうしても必要なんだが?」 「十分です」と私は言った。
「くれぐれも遅れんようにな」と老人は念を押した。「それに遅れると大変なことになるです」
「世界が崩壊でもするんですか?」と私は訊いてみた。 「ある意味ではね」と老人は含みのある言い方をした。計算はみかけよりずっと手間どった。私は与えられた数値を右側の脳に入れ、まったくべつの記号に転換してから左側の脳に移し、左側の脳に移したものを最初とはまったく違った数字としてとりだし、それをタイプ用紙にうちつけていくわけである。これが洗いだしだ。ごく簡単に言えばそういうことになる。転換のコードは計算士によってそれぞれ違う。

-引用: 村上春樹『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド・上』

このストーリーに借りて、数値をインプットととし、洗いだし(あるいはシャッフリング)をトランスレーション、最後のタイプ用紙に打ちつけた数値またはそれ自体の行為をアウトプットと置き換えてみると、よりアーティストの有機的思考の立ち位置というものがイメージ出来るかもしれません。

つまりはアーティストの「ささやかなキー」(転換コード)が現代を表象する上での重要な発端となり、体内に取り入れたイメージ(数値)、そして作品も含め、総体的に見せることによってより彼らの特権性のようなものが明確になってくるのではないだろうかということです。さらに、その入力から変換、出力においての有機的な整合性においてこそ、現代の表現者としての同時代性を見い出すことができるのではないだろうかと考えています。

果たして本展出展者たちがどのようにしてNarrativeと接触するのか、さらに作家オリジナルのブ ラックボックスを解釈し、「次の物語」の可能性がどう導き出されるのかどうか、その場に立ち会って頂きたいと思います。

鬣 恒太郎 Kotaro Tategami
1981年生まれ
2007 京都造形大学 情報デザイン学科 先端アートコース入学
2009 ULTRA PROJECTに参加(ヤノベプロジェクト) 展示 2009 AMUSE ART JAM 2009 2009 ライティングイベント「Neo after 5」/本学
2010 Kemono Effect/0000Gallery

田上穂波 Honami Tanou
1988年生まれ
2007 京都造形大学 情報デザイン学科 先端アートコース入学
2008 戦闘機プロジェクト結成 展示 2008 平和博物館は可能か/京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ
2009 めばえ展/京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ 2009 ライティングイベント「Neo after 5」/本学 2009 戦争と芸術 IV/京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ
2010 めばえ展/京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ

吉本加奈子 Kanako Yoshimoto
1988年生まれ
2007 京都造形大学 情報デザイン学科 イラストレーションコース入学
2008 京都造形大学 情報デザイン学科 先端アートコースに転コース
2009 ULTRA PROJECTに参加(石橋プロジェクト) 展示 2007–2009 IMART展 2009 ライティングイベント「Neo after 5」/本学
2010 招喜猫プロジェクト/京都 錦湯 音叉/milibarGallery

堤 拓也 Takuya Tsutsumi (キュレーション)
1987年生まれ
2007 京都造形大学 情報デザイン学科 先端アートコース入学
2008 ULTRA FACTORY / Critical design lab.

※全文提供: art project room ARTZONE


会期: 2011年2年26日(土)-2011年3月6日(日)
会場: art project room ARTZONE
オープニングパーティー: 2011年2年26日(土)18:00 -

最終更新 2011年 2月 26日
 

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