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フランク・ニーチェ:独身貴族
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2011年 1月 31日

画像提供:ナンヅカ・アンダーグラウンド
Copyright© Frank Nitsche

ドイツ人アーティスト、フランク・ニーチェ(Frank Nitsche)の日本では初となる新作個展。フランク・ニーチェは、旧東ドイツ、ドレスデン郊外のゲルリッツ(Görlitz)に生まれ、ゲルハルト・リヒターを輩出したドレスデンの美術アカデミーで学びました。同時期に学んでいた同郷のトーマス・シャイビス(Thomas Scheibitz)やエバハルト・ハヴェコスト(Eberhard Havekost)らと共にドレスデン派などとも呼ばれれ、現代のドイツ抽象画を代表するアーティストの一人として国際的に高い評価を受けています。

フランク・ニーチェは、自身の作品がいつどのように完成するかについて、自らでも予測不可能だと言います。繊細でありながらも力強さを備えた完璧なコンポジションと美しいハーモニーを奏でる色彩を探し出すまで、ニーチェは時に数年の歳月をかけてオイルペイントのレイヤーを重ねます。そのプロセスは流動的で偶発的でありながらも、作品の到着地点はアーティストの強固なクオリティーコントロールによって、常に約束の地に導かれます。そこは、知性と情緒が激しくぶつかり合いながら奇跡的なバランスを保っている自然科学の世界に似た崇高な場所です。何重にも塗り重ねられ、隠されたレイヤーは私たち人類の必ずしも賞賛されない数々の歴史的事実を想起させます。あるいは、現在進行形で覆い隠されている真実のベールを表しているのかもしれません。

ニーチェの作品は、過去と現在、未来を同時に写す鏡であるともいえます。例えば、その作品は東西ドイツを引き裂いたベルリンの壁に描かれた激しい怒りと絶望を表したグラフィティを思い起こさせます。その一方で、その作品は未発見の微生物や、分子や量子といった最先端の物理科学に用いられる記号や図面のようにも見えます。また、地球外知的生命体やその痕跡なども想起させます。

今回の新作展に寄せて、ニーチェは "独身貴族" (I AM SINGLE)というタイトルを付けていますが、過去のニーチェの展覧会タイトルと同様に、その解釈は私たちには謎のまま残されます。あたかも、作品に秘められた真のコンテクストを晦(くら)ますためのトリックであるかのように。その一方で、ニーチェは描かれる形態のイメージソースについては、几帳面にアーカイブされたその膨大な写真コレクションとして、自身の画集の中で公開しています。その多くはルポタージュ的な写真であり、私たちはその画像を見て初めてアーティストがこの世界の裏側を見ようとしている事に気付くのです。

フランク・ニーチェ
1964年、ドイツ、ゲルリッツ生まれ。 1993年、Hochschule für Bildende Künste, Dresden(国立美術大学ドレスデン校)を卒業。1995年、同大学院を修了。
近年の主な美術館での個展に、2010年 "COCKTAILHYBRIDCONCEPT" Haus am Waldsee, Berlin、2007年、”Frank Nitsche” International Musée d’Art Moderne et Contemporain, Strasbourg(ストラスブルグ現代美術館)、グループ展に、2006年 ”Opening Up Art: The View from Here. Rehanging of the permanent collection” Tate Modern, London(テートモダン)、2005年 "Do it yourself " Hamburger Bahnhof - Museum für Gegenwart, Berlin(ベルリン国立美術館)など。現在は、ベルリンに在住。

※全文提供: ナンヅカ・アンダーグラウンド


会期: 2011年2月19日(土)-2011年3月19日(土)
会場: ナンヅカ・アンダーグラウンド
オープニング・レセプション: 2011年2月19日(土)18:00 -

最終更新 2011年 2月 19日
 

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