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フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 29日

ブリュノ・ペナド《大きな一つの世界》2000 年|発泡スチロール、樹脂、ポリウレタン絵の具、木|240 x 170 x 100 cm|所蔵:ポワトゥーシャラント地域現代芸術振興基金| Photo:Christian Vignaud

トーマス・ヒルシュホーン《スピノザ・カー》2009 年|自動車、ボール紙、本、グラス、紙、プリント、テープ、フラシ天、ほか
210 x 480 x 220 cm|作家蔵|Courtesy:ARNDT, Berlin|展示風景:アンリ・ミュルジェール通り、オーベルヴィリエ、フランス

コレクターの視点を通して眺望するフランスの現代アートシーンの10 年
フランスのコレクター団体ADIAF が主催するマルセル・デュシャン賞の設立10 周年を記念した展覧会

会場では、同賞のグランプリ受賞作家に加え、一部最終選考作家とデュシャン本人を含む27 名のアーティストを一挙に紹介し、展示は、デュシャンの代表作「フレッシュ・ウィドウ(fresh widow)」=(俗にフランス窓(French Window) と呼ばれる)」に着想を得て、「デュシャンの窓」、「窓からの眺め」、「時空の窓」、「こころの窓」、 「窓の内側で」という5 部で構成されます。

第1 部では、デュシャンの主要なレディ・メイドを展示、続く3 つの部では、世代や文化背景の異なる作家たちの絵画、彫刻、写真、インスタレーション、ビデオ等により、近年活気を増し国際的にも注目されるフランス現代美術のエッセンスを紹介します。そして最後の部では、コレクターたちのアパルトマンを再現し、作品を展示します。

本展は、日常性や時間、都市の心象風景等を独創的に捉えた多様な表現を通じ「フランスの空気」を体感し、背景にある歴史や社会、文化への関心を喚起させられる機会を提供するとともに、「コレクターの時代」、「共存の時代」といわれる今、日本における公立美術館や公的機関と、民間の美術館、画廊やコレクター等との「協働の可能性」をも探ります。

ADIAF とは
ADIAF(フランス現代美術国際化推進会)は今日のフランスにおける重要な個人コレクター・グループで、会員は300 名にのぼり、在仏企業の支援を受けて運営されている。フランスの現代アートシーンを国際的に紹介し、現代美術の魅力をより多くの人に知らせることを目指し1994 年に設立された。

マルセル・デュシャン賞とは
マルセル・デュシャンに敬意を表しその名を冠した同賞は、国籍、年齢に関係なく、広くフランスに在住する作家を対象とし、フランスの現代アートシーンを牽引する作家たちの活動を支援し、国際的に紹介することを目的とする。2000 年にADIAF によって設立され、ポンピドゥー・センター国立近代美術館とFIAC(国際コンテンポラリーアートフェア)との協力により運営されている。

※全文提供: 森美術館


会期: 2011年3月26日(金)-2011年8月28日(日)
会場: 森美術館

最終更新 2011年 3月 26日
 

編集部ノート    執筆:田中 麻帆


ブリュノ・ペナド《大きな一つの世界》2000年|所蔵:ポワトゥーシャラント地域現代芸術振興基金|Photo:Christian Vignaud

「マルセル・デュシャン賞」とは、フランスのコレクター団体ADIAFが主催する現代美術賞。その10周年を記念した本展はデュシャンの代表作「フレンチ・ウィンドウ」を冠するタイトルの通り、軽妙洒脱でユーモア溢れる「窓」となって観者を色とりどりの景色へと誘う。最初の展示室でデュシャンの代表作を紹介したのち、各セクションに「窓からの眺め」「時空の窓」「こころの窓」「窓の内側」と4つのテーマを設け、キャプションにはわかりやすい解説文を載せている。初心者でも現代美術の父デュシャンから今日の作家に受け継がれてきたエッセンスを感じ取ることができるだろう。

震災の影響で多くが展示出来なくなったとはいえ作品の配置は効果的で、空間をゆったりと使って鑑賞することができる。日用品を美術作品として新たに見出したデュシャンの着想は、室内装飾と美術の融合とも言えるフォーゲの作品や、ポップな軽妙さとアイロニーを感じさせるペナド、ヒルシュホーンらの作品。更には、虚を突かれた時の笑いのような感覚を引き出すアフィフ、ラメットらの作品など、そこかしこに息づいていた。

実際のコレクターのアパルトマンに飾られている作品を部屋ごと再現したセクションもあり、様々な「窓」から新しい発見をした後この部屋に入ると、美術作品が遠い別世界の存在ではなく、私達の日常を彩り元気づけ、時に癒す栄養なのだと思えてくる。


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