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共鳴する美術2010-ストーリー・テリング-
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 22日

下道基行《そといす》(部分)
2008~2010年写真(44点)・紙・絵葉書・・椅子 ほか|作家蔵
画像提供:倉敷市立美術館|Copyright © Motoyuki Shitamichi

「今、この場所に…」物語が、はじまる。

倉敷市立美術館では地域の芸術文化の活性化を目指し、岡山ゆかりの次代を担う若手・中堅作家を紹介するシリーズ「共鳴する美術」を、平成19年度より開催しています。シリーズ4回目の今回は「物語」をテーマに、現在注目を集めている若手作家4名をとりあげます。

かつて語り手は、炉辺に集まった人々に「昔々、あるところに…」ではじまる物語を語り、物語は聞いた人々の心に共鳴し、生き続けました。本展はいわば「いま、この場所に…」で始まる物語で、4人の個性豊かな語り手たちの綾なすオムニバス形式となっています。

日展の彫刻部において異色の存在といえる片山康之の作品は、簡潔なフォルムの、端整な人物の佇まいが観る人に静かで深い印象を与えます。一人何かを耐えるような、自己の内部の幽かな声に聞き入るような表情の人物たちは一見寡黙で、語らぬことで逆説的に物語の始まりを、私たちに予感させるでしょう。今回の展覧会では、3.0×6.5mの新作ドローイングを彫刻と共に展示し、その独自の世界を豊かに展開します。

下道基行の活動の根底には、一貫して物語への強い関心があります。ここでいう「物語」とは、記憶の堆積としての風景とも言うことができるでしょう。今回は会場に、屋外に一時の休息のために置かれた椅子の写真を展示すると同時に、家庭や施設等で実際に使用されてきた椅子を設置することにより、人が座って休息し、語り合う場を、見る人の中にイメージさせようとします。また隣接する図書館でも本と旅にまつわるプロジェクトを展開します。

ドローイングが空間を埋め尽くす鷹取雅一のインスタレーション。若い男性の妄想に満ち溢れたドローイングは、自身の思い出をなぞるようでもありながらも、おびただしい集積となることでセクシャルな次元を易々と突き抜けます。優雅な悪意ともいうべき意趣で、汚らしいもの、人が避けるようなものをあえて提示する空間は、逆説的に崇高な美しさすら感じさせます。今回は公開制作により、その増殖する世界を来館者に体験していただきます。

龍門藍の描く女性像は、時に大量生産の人形であったり、タイツを被ったひしゃげた顔であったり、のし紙として髪を結い上げていたりなど、一筋縄ではいきません。「お人形としての彼女たち」の薄っぺらな幸福感、「カワイイ」が価値観の拠り所となるありようがクールに描きだされると同時に、同時代人としての違和感や社会に対する閉塞感が感じられます。今回の展示では、上海のアーティスト・イン・レジデンスで描いた3m四方の大作もご紹介します。

「いま、この場所に…」一回限り、語られる物語。これらの物語が作品を観る人々の心に共鳴し、新たな物語を生み出すことを願っています。

出品作家(生年・出身地・ジャンル)
片山 康之(1978年・倉敷市・彫刻)
下道 基行(1978年・岡山市・写真)
鷹取 雅一(1980年・岡山市・インスタレーション)
龍門 藍 (1984年・岡山市・絵画)

関連事業
・出品作家・鷹取雅一による公開制作
日時:11月12日(金)~14日(日)・20日(土)・21日(日) 10:00~16:00(12日(金)は13:00から)
場所:美術館2階通路展示コーナー

・ワークショップ「tell me your story―粘土で作る『物語』」
自作の物語の登場人物や舞台背景などを粘土で作ります。
日時:11月23日(火・祝)13:00~16:30
講師:片山康之(出品作家) 場所:美術館3階第2会議室・2階ロビー

・出品作家・下道基行による中央図書館でのプロジェクト
「旅をする本/traveling books」
旅人に手渡されることで、世界中を旅する本。本の旅の軌跡を展示し、図書館利用者もプロジェクトに参加できます。
期間:11月27日(土)~12月28日(火) 月曜日休館
場所:倉敷市立中央図書館 1階展示コーナー、展示ケース内ほか

・担当学芸員による作品解説会
日時:12月5日(日) 14:00~(約40分間)
場所:美術館2階第2・第3展示室、展示コーナー

・対話型鑑賞会
コーディネーター:当館学芸員 ほか
日時:12月12日(日) 14:00~(約40分間)
場所:美術館2階第2・第3展示室、展示コーナー

※全文提供: 倉敷市立美術館


会期: 2010年11月12日(金)-2010年12月23日(木・祝)

最終更新 2010年 11月 12日
 

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