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牡丹靖佳:馬鹿レチェと恐れミエドの会話
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 17日

〈ポンヌ〉 2010年
油彩,鉛筆ジェッソ,キャンバス
145.5 ×112 cm
画像提供:アートコートギャラリー
Copyright © Yasuyoshi Botan

牡丹靖佳は、自らをとりまく日常世界の仕組みを解体し、独自の感性とルールによって、繊細でどこか危うく、そこはかとないユーモアをも感じさせる魅惑的な絵画表現の中に再構築します。

牡丹はしばしば、キャンバス周辺の空間をも巧みに作品に取り込み提示しますが、本展では、ある二人の狂言回しによって展開する物語をベースとし、絵画を中心に、半立体の作品や投影機を使用したインスタレーションなど、多様な表現形態を用いながら、同時開催の寄神くりによる個展とも触発し合うひとつの空間装置としての作品世界をギャラリー空間全体へと展開します。

鑑賞者は、「何か」の予兆と痕跡だけが謎かけのようにちりばめられた空間=作品のなかを彷徨いながら、 物語そのものでもあり、物語の中に登場する屋敷でもあり、狂言回したちが話している部屋でもあり、現実空間でもあるような、いくつもの次元が重なり合った領域へと迷い込み、自らの曖昧で多層的な立ち位置に身を委ねながら、「どれが自分にとっての現実/実体なのか。」 こう問い直すことになるでしょう。

作品解説
緻密に描かれた山並みや木々の上から無造作に塗りたくったかのような赤や青の絵具。その滴りは、別のところから伸びてきた木の枝につながり、所在なげな絵具の染みからは小鳥が羽ばたき出す。広く残された余白は、乳白色の霧に包まれた空間の奥行きを感じさせると同時に、ただキャンバスという支持体の表面としてそこに存在しているようでもある----。

牡丹の描く絵画世界では、物質としての絵具と描かれたイメージという、絵画を成り立たせるふたつの相が、あるところでは交わらないものとして重なり、隣り合い、またあるところではグラデーションを成しながら互いに溶け合い、親密に結びつきます。

鑑賞者の眼差しは、通常の意味や文脈から解き放たれた世界の断片が密やかな暗号をやりとりする画面を漂ううちに、その交感の中へと惹き込まれていきます。そして、絵画空間という虚構と、鑑賞者の立つ現実空間は、知らず知らずのうちに地続きとなり、作品とその人との間だけに、もうひとつの風景が立ち現れるのです。

◆オープニングイベント:1月9日(日)◆
15:00〜16:00・・・鼎談 加須屋明子(京都市立芸術大学准教授) × 牡丹靖佳 × 寄神くり(個展同時開催) 
[加須屋氏と牡丹、寄神の間で交わされる言葉を通して、二人の作家による作品世界がゆるやかに結びつくような対話の場を設けます。]
16:00 〜17:00・・・〈ACG新春歌留多大会〉& レセプション
[牡丹靖佳と寄神くりが共同で手掛けた創作カルタで、物語性に満ちた一年をスタートさせましょう!]
*上記イベントについての最新の情報はWEBサイトにてご確認いただくか、ギャラリーまで直接お問い合わせ下さい。

※全文提供: アートコートギャラリー


会期: 2011年1月9日(日)-2011年2月5日(土)

最終更新 2011年 1月 09日
 

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