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長谷川冬香:room in the room
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 11月 15日

《cloth(蜘蛛の巣模様)》2010年
油彩、キャンバス|60.6×72.7cm
画像提供:YOKOI FINE ART|Copyright © Fuyuka Hasegawa

シーツやベッド、クッションなど人の肌に触れる布を描いてきた、長谷川。昨年の個展から約一年、「昨今、私の制作は部屋と絵画に迷い込むことでもある」と長谷川は言う。

持ち主の肌と密に接する存在でありながら、その持ち主が不在のものや空間を描く中で、四角いキャンバスの上で四角い部屋に置かれる四角いベッドやクッションの触感を探る中で、長谷川は現実と作品世界の迷路に迷い込んで行く。

「より良い構図をさぐり、自室や旅先の部屋、雑誌や写真集で見たベッド、誰かの持ち物の山を描く。それはどれもが人の気配を帯びている。顔の見えない誰かの気配は不穏な感覚を呼ぶ。また、寝具や部屋は持ち主不在の風景であるとも言える。そんなことを考えながら、布の柔らかさや質感を捉えようと描いている」

キャンバスに詰め込まれた、温かそうなベッド、かわいい魚模様、肌触りの良さそうな布。これらは、どこにある誰の部屋の誰の持ち物なのだろうか。ごく私的な空間は、実は複数の何者かに属する気配の集積であり、それらはまろやかな色で包まれてはいるものの、今も静かに唸り続けているのではないか。

「ふと、手に持った筆先がクッションの柄をなぞっているのか、キャンバスの表面をなぞっているのか、わからなくなる。ベッドの向こうの壁の奥行きを捉えているのか、ただキャンバスの上で絵の具を塗っているだけなのか、わからなくなる。四角い画面に四角いクッション、四角い格子模様。スパイラルに取り込まれていることに気づく」

長谷川が作り上げ、そして迷い来んだ迷路。作品が発する温かくて不穏な空気は、見る者をその迷路の中に誘う。

長谷川冬香 / Fuyuka Hasegawa
1981 神奈川県生まれ
2004 武蔵野美術大学造形学部油絵学科 卒業
2006 武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コース 修了

【個展】
2004 長谷川冬香展 (galleryJ2 / 東京)
2005 寝床の景色 浮かぶ雲 (清洲市はるひ美術館 / 愛知)
2006 エスカルゴ (人形町vision’s / 東京)
2007 tuck up…tuck into… (YOKOI FINE ART / 東京)
2008 キラり (YOKOI FINE ART / 東京)
2009 殻 (YOKOI FINE ART / 東京)
2010 room in the room (YOKOI FINE ART / 東京)

【グループ展等】
2003 アザーセンシビリティー展シリーズ第2回「安楽椅子と雲とを・・・」(文房堂ギャラリー / 東京)
2004 谷中日和 (galleryJ2 / 東京)
2005 第4回夢広場はるひ絵画ビエンナーレ (清洲市はるひ美術館/愛知)、群馬青年ビエンナーレ’05 (群馬県立近代美術館 / 群馬)
2006 VOCA 2006 (上野の森美術館 / 東京)
2007 Art in Dojima 2007 (堂島ホテル / 大阪)、ART BEIJING 2007 (National Agricultural Exhibition Center / 北京)、東京コンテンポラリーアートフェア2007 (東京美術倶楽部 / 東京)
2008 アートフェア東京2008 (東京国際フォーラム / 東京)
2010 アート台北 2010 (台北ワールドトレードセンター / 台北)、「アイチ・ジーン」 (愛知県立芸術大学芸術資料館、豊田市美術館 / 愛知)

賞歴
2003 第18回ホルベインスカラシップ奨学者
2004 武蔵野美術大学卒業制作 優秀賞
2005 第4回夢広場はるひ絵画ビエンナーレ 優秀賞、群馬青年ビエンナーレ’05 奨励賞
2006 武蔵野美術大学修了制作 優秀賞

※全文提供: YOKOI FINE ART


会期: 2010年12月10日(金) -2010年12月25日(土)

最終更新 2010年 12月 10日
 

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